解説
>可換群Gの位数nが、互いに素な2つの数m,m'の積で表わされるものとしよう。
n=mm',(m,m')=1
このとき、Gは位数がそれぞれm,m'となる2つの可換群A,Bの直積として表わされることを示そう。
Gの元の個数nが互いに素な2つの整数でn=mm'と表わされる時、Gの全ての元が(元の個数がそれぞれm,m'個の)部分群A,Bの元の積で表わされ、かつAとBの交わりが単位元だけになるという事。
定理18
群(可換とは限らない)Gの中に正規部分群A,Bが含まれ
(1)Gの要素はA,Bの要素の積で表わされる。
(2)A∩B={e}
このとき、G=A×Bとなる。
「代数的構造」遠山啓著より
念のため、可換群Gの中の部分群は全て正規部分群になる。
>まずGのなかで
a^m=e
となる要素の全体をAとすると、AはGの部分群をなす。なぜなら
a∈A
ならばa^m=eとなり、(a^m)^-1=e,したがって、
a^-1∈A
また、a,a'∈Aならばa^m=e,a'^m=eとなるから
a^ma'^m=e
a,a'は可換だから
(aa')^m=e
したがって、
aa'∈A
だからAは部分群をなす。
Gの中の全ての巡回部分群の生成元だけを集めると群になるらしい。証明は続きでなされている。
a^-1∈Aで逆元の存在,aa'∈Aで演算について閉じている事を示している訳である。
定理2.1(部分群の判定定理)
群Gの空でない部分集合をHとする。HがGの部分群であるための必要十分条件は、Hが次の条件(1)と(2)を満足していることである。
(1)∀a,b∈H⇒a◦b∈H
(2)∀a∈H⇒a^-1∈H
さらに(1),(2)は、次の(3)と同値である。
(3)∀a,b∈H⇒a◦b^-1∈H
「群・環・体 入門」新妻弘・木村哲三著より
以前にも書いたが、今回などは位数nの有限群なので、本当は閉じている事だけを示せば良い。
定理2.3
群Gの空でない有限部分集合をHとする。Hが部分群になるための必要十分条件は、Gの演算に関してHが閉じていることである。
「群・環・体 入門」新妻弘・木村哲三著より
念のため、大本が有限群だから部分集合も有限という事である。
>群Aの位数はmと互いに素な素因数を含むことはない。なぜなら、そのような素因数pを含むとしたら、補題によりAは位数pの要素aを含む。ここで
px+my=1
となる整数x,yが存在し、
a=a¹=a^(px+my)=(a^p)^x・(a^m)^y
=e^x・e^y=e
となり、a≠eに矛盾するからである。
補題
pが可換群Gの位数nの素因数であるとき、Gは位数pの要素を含む。
「群Aの位数をsとするとsはmと互いに素な素因数pを含むことはない。」
これを背理法で証明している訳である。
sがmと互いに素な素因数pを含むと仮定すると、補題より群Aは位数pの元を含む。
ここで、mとpが互いに素な事より、定理1.7により、px+my=1となる整数x,yが存在する。
定理1.7
2つの整数a,bの最大公約数をdとすれば、d=ax+byを満足する整数x,yが存在する。すなわち
(a,b)=d⇒∃x,y∈ℤ,ax+by=d
「群・環・体 入門」新妻弘・木村哲三著より
念のため、(a,b)はaとbの最大公約数を表していて、互いに素は最大公約数が1だから、(a,b)=1でax+by=1である。
>a=a¹=a^(px+my)=(a^p)^x・(a^m)^y
=e^x・e^y=e
となり、a≠eに矛盾するからである。
「Aは位数pの要素aを含む」より、aの位数はpなので、a^p=e
また、aはAの元なので、a^m=e(「a^m=e
となる要素の全体をA」だから。)
これらを代入すると上の式も分かるだろう。aは位数pだから≠eという事である。
>したがってAの位数はmの素因数のみを含む。
「群Aの位数はmと互いに素な素因数を含むことはない」事を証明したからである。
>一方またb^m'=eとなるすべての要素をBとすると、BはまたGの部分群をなす。
Aの場合と全く同じだからである。
>一方A∩Bの要素をcとすると、定義によって、
c^m=e,c^m'=e
ここで(m,m')=1であるから
mx+m'y=1
となる整数x,yが存在する。
c=c¹=c^(mx+m'y)=(c^m)^x・(c^m')^y
=e^x・e^y=e
したがって
A∩B={e}
これは定理1.7を理解していれば分かるので、解説は省略。因みに、
定理18
群(可換とは限らない)Gの中に正規部分群A,Bが含まれ
(1)Gの要素はA,Bの要素の積で表わされる。
(2)A∩B={e}
このとき、G=A×Bとなる。
「代数的構造」遠山啓著より
この(2)を示すためである。
>またGの任意の要素をdとしよう。
d=d¹=d^(m'y+mx)=d^m'y・d^mx
とすると、
(d^m'y)^m=d^mm'y=d^ny=e^y=e
だからd^m'yはAに属し、同じく
(d^mx)^m'=d^mm'x=d^nx=e^x=e
だからd^mxはBに属する。だから
G=A×B
と書ける。
mとm'が互いに素より定理1.7を使っている訳である。また、「(d^m'y)^m=d^mm'y=d^ny=e^y=eだからd^m'yはAに属し」は、「a^m=eとなる要素の全体をA」だからである。
Bの方は、「b^m'=eとなるすべての要素をB」だからである。
そして、Gの任意の元dがd=d^m'y・d^mxと表されたから、G=A×Bと書けるという事。
>A,Bの位数をそれぞれm₁,m₁'とすると
n=m₁m₁'
一方n=mm'であり、また、mとm₁,m'とm₁'は同種類の素因数のみを含むことが証明されたからm₁とm₁'とは互いに素であり素因数分解の一意性によって、
m=m₁,m'=m₁'
となる。
このために「したがってAの位数はmの素因数のみを含む」を証明したのである。(Bの方も同様の事が成り立つ。)
よって、m₁はmの素因数のみで構成されていて、m₁'はm'の素因数のみで構成されていて、mとm'は互いに素よりm₁とm₁’も互いに素である。また、条件よりn=mm'なので、n=m₁m₁'と合わせて、m₁m₁'=mm'となり、
例えば、互いに素な2数の積を考えると、
4・9=4・9(3・12,6・6などには出来ない)などで、m₁=m,m₁'=m'となるという事。
>したがってA,Bの位数はそれぞれm,m'である。
「Gの元の個数nが互いに素な2つの整数でn=mm'と表わされる時、Gの全ての元が(元の個数がそれぞれm,m'個の)部分群A,Bの元の積で表わされ、かつAとBの交わりが単位元だけになるという事。」
最後にこの括弧の中を示した訳である。
おまけ: