解説
>係数をηのすべての式としたときの群をGfとおく。このときGfはζをζ^aに取り換える根の入れ換えσで生成される(問題9-6,9-7)。
問題文より、「pを素数とし、ζ,ηをそれぞれ1の原始p乗根,1の原始p-1乗根」としていて、pとp-1は互いに素(pは素数よりpより小さい自然数なら相手が何でも互いに素。因みに、pが素数じゃなくても連続する2整数は互いに素)なので、問題9-7bより、
問題 9-7b
m,nを互いに素な正整数とする。このときΦn(x)は、1の原始m乗根ζmの有理数の式を係数に許しても、2つの1次以上の積に分解しない。つまり既約であることを示せ。
Φp(x)は、1の原始p-1乗根の式を係数に許しても既約。よって、その条件でもΦp(x)を円分多項式扱いして良い。
定理7.1(円分多項式の既約性)
Φn(x)は有理数係数多項式として既約である。
よって、問題9-6bより、
問題 9-6b
円分多項式Φn(x)の群Gは、nと互いに素なaに対して
σa:ζ→ζ^a(ζは1の原始n乗根)
で定まる根の入れ換えからなることを示せ。
「このときGfはζをζ^aに取り換える根の入れ換えσで生成される」という事である。
ところで、前回述べたように、問題 9-7b自体に問題があると問題9-8bもダメな理由はこれである。
>まずη^(p-1)j・ζ^a^(p-1)=ζ,η^pj・ζ^a^p=η^jζ^aであることに注意する(∵η^(p-1)=1,a^(p-1)≡1 modp,a^p≡a modp)。
問題文より、「pを素数とし、ζ,ηをそれぞれ1の原始p乗根,1の原始p-1乗根とする。aを(ℤ/pℤ)^×の原始根とする。」
よって、η^(p-1)=1 この両辺をj乗すると、η^(p-1)j=1———➀
また、aが(ℤ/pℤ)^×の原始根より、
a^(p-1)≡1(modp)
問題4-12b
pを素数とする。このとき(ℤ/pℤ)^×はある整数aのべき集合{a,a²,・・・,a^(p-1)=1}に等しいことを示せ。このaを(ℤ/pℤ)^×の原始根という。
よって、ζ^a^(p-1)=ζ(上の関係を指数に使ったという事。)
∴ζ^(a^p/a)=ζ ∴ζ^a^p=ζ^a———②
➀×②より、
η^(p-1)j・ζ^a^p=ζ^a
この両辺にη^jを掛けると、
η^pj・ζ^a^p=η^j・ζ^a
よって、「η^pj・ζ^a^p=η^jζ^aであることに注意する」が示された。
>(1)ξjはσにより
η^jζ^a²+η^2jζ^a³+・・・+η^(p-1)jζ^a^p
=η^-j・(η^2jζ^a²+η^3jζ^a³+・・・+η^pjζ^a^p)=η^-jξj
である。
問題文より、σは「ζをζ^aに取り換える」事より、
ξj=η^jζ^a+η^2jζ^a²+・・・
+η^(p-1)jζ^a^(p-1)
のζをζ^aに入れ換えると、
η^jζ^a²+η^2jζ^a³+・・・+η^(p-1)jζ^a^p
となり、これをη^-jでくくると、
=η^-j・(η^2jζ^a²+η^3jζ^a³+・・・+η^pjζ^a^p)
となり、ここで、上で証明した「η^pj・ζ^a^p=η^jζ^aであることに注意する」を最後の項に代入すると、後半(カッコ内)は、
η^2jζ^a²+η^3jζ^a³+・・・+η^pjζ^a^p
=η^2jζ^a²+η^3jζ^a³+・・・+η^jζ^a
=η^jζ^a+η^2jζ^a²+・・・
+η^(p-1)jζ^a^(p-1)=ξj
となり、入れ換えた全体は、
=η^-jξjとなる。
>(2)(1)よりξj^(p-1)はGfで不変である。よってξj^(p-1)=aj(ajはηの式)と表される。
(1)より、ξj→η^-jξj
この両方をp-1乗すると、
ξj^(p-1)→(η^-j)^(p-1)ξj^(p-1)
=(η^(p-1))^-j・ξj^(p-1)
ところで、ηは1の原始p-1乗根より、
η^(p-1)=1
よって、(η^(p-1))^-j=1より、
ξj^(p-1)→ξj^(p-1)となるので、σで不変よりGfでも不変である。
>よってξj^(p-1)=aj(ajはηの式)と表される。
ξj^(p-1)はGfで不変であるので、定理9.1(2)より定数である。
定理9.1(基本定理)
重根を持たないd次多項式f(x)に対して、その根α₁,・・・,αdの入れ換えのなす群Gfであって、次の性質をみたすものがただ1つ存在する:
(1)α₁,…,αdの2つの式が同じ値を定めるならば、Gfの各元で根を入れ換えても2式の値は等しい。すなわちg(α₁,…,αd)=h(α₁,…,αd)ならば、Gfの元でαi₁,…,αidと入れ換えてもg(αi₁,…,αid)=h(αi₁,…,αid)が成り立つ。
(2)α₁,…,αdの式に対して、その値は、Gfのどの元で根を入れ換えても変わらないとき、定数である。
この群Gfを多項式f(x)の群という。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
よって、ξj^(p-1)=ajと置ける。
ここで、鋭い人は、
ξj=η^jζ^a+η^2jζ^a²+・・・
+η^(p-1)jζ^a^(p-1)(j=1,・・・,p-1)
は、Φp(x)の根ζだけの式じゃないので、定理9.1の(2)は使えないと言うかもしれない。しかし、大丈夫である。Φp(x)の係数はηの式全体なので、ηまで許されているからである。(問題9-7bと定理7.1参照)
(ajはηの式)は、ηの式は係数で定数扱いという意味。
>η^j+η^2j+・・・+η^(p-1)j
=η^j(η^(p-1)-1)/(η-1)=0(j=1,2,・・・,p-2)なので、ξ₁+・・・+ξp-1=(p-1)ζである。
今、η^j+η^2j+・・・+η^(p-1)jを作り、等比数列の和の公式で求めると、
η^j+η^2j+・・・+η^(p-1)j
=η^j(1-η^(p-1)j)/(1-η^j)———☆
(初項がη^jで公比がη^jで項数がp-1個だから。つまり、模範解答は間違っている。後で述べるが、これでは(j=1,2,・・・,p-2)の理由が言えない。)
また、ηは1の原始p-1乗根より、η^(p-1)=1で、この両辺をj乗すると、
η^(p-1)j=1 これを☆に代入すると、
η^j+η^2j+・・・+η^(p-1)j=0
また、分母の1-η^jのjをj=p-1とすると、η^(p-1)=1となり分母が0となり不能である。
よって、(j=1,2,・・・,p-2)という訳である。
また、ξj=η^jζ^a+η^2jζ^a²+・・・
+η^(p-1)jζ^a^(p-1)のjをj=1,2,・・・,p-1として総和を取ると、
ξ₁=ηζ^a+η²ζ^a²+・・・+η^(p-1)ζ^a^(p-1)
ξ₂=η²ζ^a+η⁴ζ^a²+・・・+η^2(p-1)ζ^a^(p-1)
・
・
・
ξp-1=η^(p-1)ζ^a+η^2(p-1)ζ^a²+・・・+η^(p-1)²ζ^a^(p-1)
より、
ξ₁+・・・+ξp-1
=(η+η²+・・・+η^(p-1))ζ^a
+(η²+η⁴+・・・+η^2(p-1))ζ^a²
・
・
・
+(η^(p-1)+η^2(p-1)+・・・・
+η^(p-1)²)ζ^a^(p-1)
ここで、j=1,2,・・・,p-2までは、
η^j+η^2j+・・・+η^(p-1)j=0より、
ξ₁+・・・+ξp-1=
(η^(p-1)+η^2(p-1)+・・・・+η^(p-1)²)ζ^a^(p-1)———★
また、ηは1の原始p-1乗根より、
η^(p-1)=1で、aが(ℤ/pℤ)^×の原始根より、a^(p-1)≡1(modp)なので、
★の右辺は、(1+1+・・・+1)ζ^1
=(p-1)ζ(1がp-1個より)
∴ξ₁+・・・+ξp-1=(p-1)ζ
おまけ: