解説
>問題 9-11b
(重根を持たない)既約3次多項式f(x)の多項式の群Gfについて次を示せ。以下においてDをf(x)の判別式とする。
(1)Dの平方根√Dが定数でないとき(すなわちx²-Dが既約なとき)、Gfはf(x)の根のすべての入れ換えからなる。つまりGfは3次対称群S₃と同型である。
(2)Dの平方根√Dが定数のとき(すなわちx²-Dが可約なとき)、Gfはf(x)の根の3つの入れ換えからなる。つまりGfは3次交代群A₃と同型である。
まず、問題の意味は、p.160に、
「f(x)の根をα=³√2,β=αω,γ=αω²とし、
δ=(α-β)(β-γ)(γ-α)
とします。δはf(x)の判別式の平方根です。」
とあるので、δ=±√Dという事であり、
√D=±(α-β)(β-γ)(γ-α)
この右辺が定数(有理数)にならなければf(x)の群GfはS₃と同型で、定数になればA₃と同型になるという事である。
>まず、次の事実に注意する:「既約多項式f(x)の任意の2つの根α,α'について、多項式の群のある元(根の入れ換え)によりαはα'に入れ換わる。」実際、αが多項式の群の入れ換えでα₁=α,α₂,…,αsとなったとすると、g(x)=(x-α₁)…(x-αs)はαの最小多項式であり(問題9-5)、f(x)と定数倍しか違わないからである。
これはおかしいですよね。
問題 9-5b
多項式f(x)の群をGfとする。f(x)の根の式βが、Gfの根の入れ換え(すべて)により、異なる数β₁=β,・・・,βsになったとする。このとき
g(x)=(x-β₁)(x-β₂)・・・(x-βs)はβiの最小多項式であることを示せ。よってβiの最小多項式は重根を持たない。
またs=degg(x)は、βを不変にする入れ換え全体のなすGfの部分群Hの指数(G:H)に等しいことを示せ。
f(x)の次数とf(x)の群Gfの元の個数が一致する場合だけですよね。つまり、f(x)とg(x)が一致する場合である。(「g(x)=(x-α₁)…(x-αs)はαの最小多項式であり(問題9-5)、f(x)と定数倍しか違わない」のだから。)
ただし、全体的には修正可能なので続ける。
>3次既約多項式の群は3次対称群S₃の部分群であり、上の「…」の性質を持つ部分群である。
上の「…」とは、「既約多項式f(x)の任意の2つの根α,α'について、多項式の群のある元(根の入れ換え)によりαはα'に入れ換わる。」の事である。
また、「3次既約多項式の群は3次対称群S₃の部分群」は、3次既約多項式の根はα₁,α₂,α₃の3つで、定理9.1(基本定理)より、f(x)の多項式の群Gfは「重根を持たないd次多項式f(x)に対して、その根α₁,…,αdの入れ換えのなす群」なので、S₃の部分群という訳である。
>このような部分群はS₃とA₃しかない。
A₃の場合は、元の個数が3個で条件の「既約3次多項式f(x)」の3同士が一致しているので、問題ない。(「f(x)の次数とf(x)の群Gfの元の個数が一致する場合だけですよね」に対して問題ないという事。)
また、S₃の場合も(問題ない)A₃を部分群に持つので、これも問題ない。
また、次のように考える事も出来る。
つまり、「既約多項式f(x)の任意の2つの根α,α'について、多項式の群のある元(根の入れ換え)によりαはα'に入れ換わる。」という性質を持つS₃の部分群はS₃とA₃しかない理由を述べれば良い。因みに、S₃の部分群は6個ある。
(1){(1,2,3)}(本当は2段で入れ換えを表すが、書けないので入れ換わった結果だけ書く。)
(2){(1,2,3),(2,1,3)}
(3){(1,2,3),(1,3,2)}
(4){(1,2,3),(3,2,1)}
(5){(1,2,3),(2,3,1),(3,1,2)}
(6){(1,2,3),(2,1,3),…,(3,1,2)}(6個全部)
例えば、(2)の群の右の元では1と2だけ入れ換わるが、3が入れ換わらないので、「既約多項式f(x)の任意の2つの根α,α'について、多項式の群のある元(根の入れ換え)によりαはα'に入れ換わる。」という性質を満たさないからである。(「任意の」が大事である。)
よって、(5)と(6)が適正という事である。つまり、A₃とS₃。
>f(x)の3つの根をα,β,γとすると√D(≠0)はδ=(α-β)(β-γ)(γ-α)の(±1)倍である。
p.160に、
「f(x)の根をα=³√2,β=αω,γ=αω²とし、
δ=(α-β)(β-γ)(γ-α)
とします。δはf(x)の判別式の平方根です。」
とあるので、δ=±√Dという事である。
よって、「√D(≠0)はδ=(α-β)(β-γ)(γ-α)の(±1)倍である」。
>δを不変にするのはA₃だから(S₃の互換によりδは-δになる)、次のようにわかる:
√Dが定数でない ⇔ Gf=S₃である。
√Dが定数である ⇔ Gf=A₃である。
A₃とは、上の「(5){(1,2,3),(2,3,1),(3,1,2)}」である。
つまり、α→β,β→γ,γ→αにするような入れ換えである。
よって、δ=(α-β)(β-γ)(γ-α)をこれで入れ換えると、
δ'=(β-γ)(γ-α)(α-β)=δ
よって、A₃で不変である。
また、S₃は上の(6)で「(2){(1,2,3),(2,1,3)}」のような元も入っているので、これでδ=(α-β)(β-γ)(γ-α)のαとβを入れ換えると、
δ'=(β-α)(α-γ)(γ-β)
=-(α-β)(β-γ)(γ-α)=-δ
よって、δは-δになるのでS₃は不変ではない。
ところで、定理9.1(2)より、Gfのどの元で根を入れ換えても変わらない時、定数なので、
√Dが定数でない ⇔ Gf=S₃である。
√Dが定数である ⇔ Gf=A₃である。
という事である。
定理9.1(基本定理)
重根を持たないd次多項式f(x)に対して、その根α₁,・・・,αdの入れ換えのなす群Gfであって、次の性質をみたすものがただ1つ存在する。
(1)α₁,・・・,αdの2つの式が同じ値を定めるならば、Gfの各元で根を入れ換えても2式の値は等しい。すなわちg(α₁,・・・,αd)=h(α₁,・・・,αd)ならば、Gfの元でαi₁,・・・,αidと入れ換えてもg(αi₁,・・・,αid)=h(αi₁,・・・,αid)が成り立つ。
(2)α₁,・・・,αdの式に対して、その値は、Gfのどの根で入れ換えても変わらないとき、定数である。
この群Gfを多項式f(x)の群という。
感想としては、先生たちは慣れ過ぎちゃって、先の知識から勘違いを起こしやすいようである。(念のため、証明自体は誤りとは言えない。ただし、とても参考書としては使えないだろう。)
因みに、前回の問題 9-10bでも同じ事をしている。
>f(x)は既約なので、問題9-5より、f(x)の根αはGfの根の入れ換えにより、f(x)のどの根にもなる。
これおかしくないですか。
正しくは、「n次既約多項式f(x)の群Gfがn個の元(根の入れ換え)からな」っているから、「f(x)の根αはGfの根の入れ換えにより、f(x)のどの根にもなる」じゃないですか。
その理由は、問題9-5のg(x)は最小多項式より既約多項式で、今回のf(x)は次数と多項式の群Gfの元の個数が一致しているので、問題9-5のg(x)に見立てる事が出来る。すると、
f(x)=g(x)=(x-α₁=α)(x-α₂)…(x-αn)(n次既約多項式だから。)
また、β=αとなり、α₁,…,αnはGfによる根αの入れ換えとなるから。
>|Gf|はf(x)の次数と等しいので、αを変えない根の入れ換えは恒等入れ換えのみである。
これもおかしくないですか。前半はもっと前に使うべきだと思いますが。
2025/5/8 15:17の投稿より引用。
おまけ: