素朴な疑問コーナー
問題 9-7b
m,nを互いに素な正整数とする。このときΦn(x)は、1の原始m乗根ζmの有理数の式を係数に許しても、2つの1次以上の積に分解しない。つまり既約であることを示せ。このことより、120ページの(2)から(5)は係数(定数)を有理数から1の原始m乗根の式に拡張しても正しいことがわかる。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
Φn(x)をΦ4(x)とすると、p.119より、
Φ4(x)=x²+1
ここで、n=4と互いに素な数をm=3とすると、1の原始3乗根は、ωとω²の2つ。
よって、Φ4(x)=x²+1の係数をω=(-1+√3i)/2に許してもΦ4(x)=x²+1は既約多項式であるという事がこの定理の主張である。
ところが、Φ4(x)=x²+1=(x+i)(x-i)と分解すると、iは(-1+√3i)/2のうちに入っていないのだろうか。
また、n=4と互いに素なmをm=5として、原始5乗根を求めると、
x⁵-1=0より、(x-1)(x⁴+x³+x²+x+1)=0
よって、x⁴+x³+x²+x+1=0の解4個が原始5乗根である(5は素数だから1~4は全て5と互いに素だから)。
ところで、この式の解はx≠0より、x²で両辺を割ると、x²+x+1+1/x+1/x²=0
∴(x+1/x)²-1+(x+1/x)=0
ここで、X=x+1/xと置くと、
X²+X-1=0 ∴X=(-1±√5)/2
∴x+1/x=(-1±√5)/2
∴x²-{(-1±√5)/2}x+1=0
これを解の公式で解いて整理すると、
x=(-1+√5)/4±{√(10+2√5)/4}i
(-1-√5)/4±{√(10-2√5)/4}i
やはり、Φ4(x)=x²+1=(x+i)(x-i)とすると、Φ4(x)は可約とは見ないのだろうか。
さらに、n=4と互いに素でないmをm=6とすると、原始6乗根は、x⁶-1=0を解いて、
(x³+1)(x³-1)=0
∴(x+1)(x²-x+1)(x-1)(x²+x+1)=0
∴x=±1,(1±√3i)/2,(-1±√3i)/2
これを複素平面の単位円上のθの小さい順位並べると、
(1+√3i)/2,(-1+√3i)/2,-1,(-1-√3i)/2,(1-√3i)/2,1
よって、原始6乗根は、6と互いに素な1番目と5番目より、x=(1±√3i)/2である。
やはり、Φ4(x)=x²+1=(x+i)(x-i)とすると、互いに素じゃなくても同じになる。
おかしいかどうか分からないが、おかしいとしたら証明にもおかしな部分があるはずである。強いてあげるとしたら、
>ζ^mは1の原始n乗根であり、Hに含まれる入れ換えをζ^mに施すことにより、すべての1の原始n乗根が得られる(定理2.2参照)。
Gを(ℤ/mnℤ)^×と同一視する事により、σaが[a]mnに対応し、mとnが互いに素な事より定理2.2(中国剰余定理)により全単射になるから。
定理2.2(中国剰余定理)
互いに素な正整数m,nに対して、環ℤ/mnℤの元は次の対応により、ℤ/mℤ×ℤ/nℤの元と1対1に対応する。
ℤ/mnℤ→ℤ/mℤ×ℤ/nℤ;[a]mn→([a]m,[a]n)
さらにこの対応により、それぞれの和,積が対応する。すなわち
[a+b]mn→([a]m⊕[b]m,[a]n⊕[b]n)
[ab]mn→([a]m⊙[b]m,[a]n⊙[b]n)
ここかな。確かに「すべての1の原始n乗根が得られる」ような気がするが、具体例で試すと、
Φmn(x)=Φ12(x)=x⁴-x²+1と置く(Φ12(x)=x⁴-x²+1は、p.133の問題7-2aから分かる)と、
x⁴-x²+1=(x²+1)²-3x²
=(x²+1+√3x)(x²+1-√3x)より、
x²+√3x+1=0,x²-√3x+1=0
∴x=(-√3±i)/2,(√3±i)/2
ここで、ζ=(√3+i)/2と置くと、問題9-6bより、
問題 9-6b
円分多項式Φn(x)の群Gは、nと互いに素なaに対して
σa:ζ→ζ^a(ζは1の原始n乗根)
で定まる根の入れ換えからなることを示せ。
Φ12(x)の群Gは、ζ¹,ζ⁵,ζ⁷,ζ^11の入れ換えで求められるので、
(ζ,ζ⁵,ζ⁷,ζ^11)
(ζ⁵,ζ^25,ζ35,ζ^55)=(ζ⁵,ζ,ζ^11,ζ⁷)
(ζ⁷,ζ^35,ζ49,ζ^77)=(ζ⁷,ζ^11,ζ,ζ⁵)
(ζ^11,ζ^55,ζ^77,ζ^121)=(ζ^11,ζ⁷,ζ⁵,ζ)
∴G={(ζ,ζ⁵,ζ⁷,ζ^11),(ζ⁵,ζ,ζ^11,ζ⁷),(ζ⁷,ζ^11,ζ,ζ^⁵),(ζ^11,ζ⁷,ζ⁵,ζ)}
(注:群Gの元は本当は2段だが1段で表している。)
また、mn=3・4(互いに素)とすると、
ζ³は1の原始4乗根((ζ³)⁴=ζ^12=1だから)より、ζ³の式全体Mにガロア対応するGの部分群Hは4と互いに素な1と3で、
H={(ζ,ζ⁵,ζ⁷,ζ^11),(ζ⁷,ζ^11,ζ,ζ^⁵)}
よって、ζ→ζとζ→ζ⁷でζ³を変換すると、
ζ³→ζ³,ζ³→ζ^21=ζ⁹
ところで、ζ=(√3+i)/2より、
ζ³={(√3+i)/2}³
=(3√3-i+9ⅰ-3√3)/8
=i
∴ζ⁹=(ζ³)³=i³=-i
よって、ζ³は1の原始4乗根すべてに変換される。
よって、「Hに含まれる入れ換えをζ^mに施すことにより、すべての1の原始n乗根が得られる」という例である。
また、ζ⁴は1の原始3乗根((ζ⁴)³=ζ^12=1だから)より、ζ⁴の式全体Mにガロア対応するGの部分群Hは3と互いに素な1と2で、
H={(ζ,ζ⁵,ζ⁷,ζ^11),(ζ⁵,ζ,ζ^11,ζ⁷)}
よって、ζ→ζとζ→ζ⁵でζ⁴を変換すると、
ζ⁴→ζ⁴,ζ⁴→ζ^20=ζ⁸
ところで、ζ=(√3+i)/2より、
ζ⁴={(√3+i)/2}⁴
={(3-1+2√3i)/4}²
={(1+√3i)/2}²
=(-2+2√3i)/4
=(-1+√3i)/2=ω
∴ζ⁸=(ζ⁴)²=ω²
よって、ζ³は1の原始3乗根すべてに変換される。
よって、「Hに含まれる入れ換えをζ^mに施すことにより、すべての1の原始n乗根が得られる」という例である。
と見事にうまく行くのだが、実は、
>ζ^mは1の原始n乗根であり、Hに含まれる入れ換えをζ^mに施すことにより、すべての1の原始n乗根が得られる(定理2.2参照)。
ではなく、ζ^nに施しているのである。
(Hは「部分群Hはδa(ただしa≡1 modm)」改め「部分群Hはδa(ただしaはmと互いに素)で行っている。)
まぁ、専門家じゃないので、ガロア理論をもっと易しい本で理解すればいいだけなのでスルーするが。
おまけ: