解説
>x=a₁b₁+…+arbr+ar+1br+1+…+anbn,ai∈K
とすれば、F(b₁)=…=F(br)=0'である
「部分空間F^-1(0')の基底<b₁,…,br>」より、b₁,…,brはF^-1(0')の元だから、
F(b₁)=…=F(br)=0'という事。
>F(b₁)=…=F(br)=0'であるから
x'=F(x)=ar+1F(br+1)+…+anF(bn)∈K・F(br+1)+…+K・F(bn)
x=a₁b₁+…+arbr+ar+1br+1+…+anbnより、
F(x)=F(a₁b₁+…+arbr+ar+1br+1+…+anbn)
=F(a₁b₁)+…+F(arbr)+F(ar+1br+1)+…+F(anbn)(Fは線型写像だから。)
=a₁F(b₁)+…+arF(br)+ar+1F(br+1)+…+anF(bn)(Fは線型写像だから。)
これに「F(b₁)=…=F(br)=0'」を代入すると、前半は全て0になり、
F(x)=ar+1F(br+1)+…+anF(bn)となるので、
x'=F(x)=ar+1F(br+1)+…+anF(bn)∈K・F(br+1)+…+K・F(bn)
となるという事。
>すなわち、
F(V)=K・F(br+1)+…+K・F(bn)
「F(V)の任意の元x'」より、x'はF(V)の任意の元なので、
上のx'∈K・F(br+1)+…+K・F(bn)は、F(V)⊂K・F(br+1)+…+K・F(bn)———①
また、Vの任意の元を考えると「Vの基底<b₁,…,br,br+1,…,bn>」より、
F(V)=K・F(b₁)+…+K・F(br)+K・F(br+1)+…+K・F(bn)
⊃K・F(br+1)+…+K・F(bn)
∴F(V)⊃K・F(br+1)+…+K・F(bn)———②
①,②より、
F(V)=K・F(br+1)+…+K・F(bn)
これによって、<F(br+1),…,F(bn)>がF(V)を生成する事が言えたという事。
>cr+1F(br+1)+…+cnF(bn)=0'
ならば、
F(cr+1br+1+…+cnbn)=cr+1F(br+1)+…+cnF(bn)=0',
cr+1br+1+…+cnbn∈F^-1(0')=Kb₁+…+Kbr
となるから、
cr+1br+1+…+cnbn=c₁b₁+…+crbr
と書ける。b₁,…,br,br+1,…,bnの線型独立性より、cr+1=…=cn=0が生ずる。
よって、F(br+1),…,F(bn)も線型独立であり、線型空間F(V)の基底をつくる。
まず「cr+1F(br+1)+…+cnF(bn)=0'」とすると、Fは線型写像より、
F(cr+1br+1+…+cnbn)は、cr+1F(br+1)+…+cnF(bn)=0'となる。
よって、F(cr+1br+1+…+cnbn)=0'より、
cr+1br+1+…+cnbn∈F^-1(0')
また、「<b₁,…,br>がFの核F^-1(0')の基底」より、F^-1(0')=Kb₁+…+Kbrより、
cr+1br+1+…+cnbn∈Kb₁+…+Kbr
という事。
よって、cr+1br+1+…+cnbn=c₁b₁+…+crbrと置け、移項すると、
c₁b₁+…+crbr-cr+1br+1-…-cnbn=0 また、<b₁,…,br,br+1,…,bn>はVの基底より線型独立である。
よって、c₁=…=cr=(-cr+1)=…=(-cn)=0より、cr+1=…=cn=0
よって、cr+1F(br+1)+…+cnF(bn)=0'ならばcr+1=…=cn=0なので、
F(br+1),…,F(bn)も線型独立である。
よって、先の「<F(br+1),…,F(bn)>がF(V)を生成する事が言えたという事」と合わせて、「線型空間F(V)の基底をつくる」という事。
定義
Vを数体K上の線型空間とする。Vの有限個の元b₁,b₂,…,bn(n≧1)の順序を考えた組を
<b₁,b₂,…,bn>
で表わす。順序を考えた組<b₁,b₂,…,bn>が次の二つの条件をみたすとき、これをVの基底または底と言う。
(1)b₁,b₂,…,bnは線型独立である。
(2)Vの任意の元はb₁,b₂,…,bnの線型結合である。すなわち
V=Kb₁+Kb₂+…+Kbn
「線型代数入門」有馬哲著より
>このとき<F(br+1),…,F(bn)>がF(V)の基底であることを示せばよい。
Fが単射でもないのに、何故こんな事を言えるのか理由を述べて下さい。念のため、例えば、biとbi+1が共にF(bi)に写像されたら基底の個数が減るので次元が異なってしまうという事。
定理(3.2.9)(次元定理)
dimV<∞のとき、線型写像F:V→V'に対しdimV=dimF^-1(0')+dimF(V)
もっとくわしく、Vの基底<b₁,…,br,br+1,…,bn>を適当にとれば、<b₁,…,br>がFの核F^-1(0')の基底、<F(br+1),…,F(bn)>が像F(V)の基底になる。
b₁,…,br,br+1,…,bnが線型独立でb₁,…,brも線型独立より、br+1,…,bnも線型独立である。(ダブりなど無駄がない形だから。)
そして、上で「F(br+1),…,F(bn)も線型独立であ」る事を示したので、このn-r個の元に関してだけは全単射が成り立つからである。(念のため、自分で裏を取って下さい。)
因みに、線型写像は線型従属性は保存するが、線型独立性は保存するとは限らない。
定義
線型従属の否定を線型独立と言う。すなわち、a₁,a₂,…,akが線型独立とは
“c₁a₁+c₂a₂+…+ckak=0ならば必ずc₁=c₂=…=ck=0”
が成り立つことである。線型独立性は線型写像によって必ずしも保存されない。
「線型代数入門」有馬哲著より
おまけ:
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