解説の続き
問題 9-4b
次の有理数係数多項式の群を求めよ。
(1)x⁴-2 (2)x⁴-4x²+2
解答
(1)f(x)=x⁴-2の根は±⁴√2,±⁴√2ⅰである。(⁴√2ⅰ)/⁴√2=iより、Gfは多項式x²+1の群を商群に持つ。一方、iの式(有理数係数)を係数に許してもf(x)は既約である。実際、どの1次因子の組み合わせからも、係数から√2が得られる。これは√2が無理数だからあり得ない。iの式を係数とするとき、⁴√2はf(x)の原始元となり、f(x)の群Hは4個の入れ換えからなる。商群Gf/Hが2個の入れ換えからなるので、Gfは8個の入れ換えからなる。(原始元の最小多項式が8次であることを利用してもよい(問題8-6)。)
(2)f(x)=x⁴-4x²+2のアイゼンシュタインの既約判定法(問題2-11)より既約である。f(x)の根は
x⁴-4x²+2=(x⁴-4x²+4)-2=(x²-2)²-2=(x²-2-√2)(x²-2+√2)
よりx=±√(2+√2),±√(2-√2)である。
このときα=√(2+√2)はf(x)の原始元である。実際、ほかの根は-αと
√(2-√2)={√(2-√2)√(2+√2)}/√(2+√2)=√2/√(2+√2)=(α²-2)/α=α³-3α
と、-(α²-2)/αと表されるからである。最後の等式はα⁴-3α²=α²-2を用いた。よって多項式の群はαをf(x)の根に入れ換える4個の入れ換えからなる群である。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
問題 8-6b
f(x)=x⁴-2について次の問いに答えよ。
(1)f(x)の4つの根を求めよ。
(2)(1)の根をα₁,α₂,α₃,α₄とおく。ただしα₁,α₃は実数,α₂,α₄は純虚数で、α₁,-α₃,-α₂ⅰ,α₄ⅰは正の実数とする。このときβ=α₁+α₂-α₃はf(x)の原始元であることを示せ。
(3)(2)のβを根に持つ8次多項式を1つ求めよ。
解答
(3)(2)で計算したβ⁴を利用すると(β⁴+14)²=-48²である。よってβは
(x⁴+14)²+48²=x⁸+28x⁴+2500
の根である。これが求める式である。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
問題 2-11b
整数係数多項式f(x)=anx^n+・・・+a₁x+a₀が次をみたすとする:ある素数pに対して、
(ⅰ)anはpで割り切れない。
(ⅱ)a₀,・・・,an-₁はpで割り切れる。
(ⅲ)a₀はp²で割り切れない。
このときf(x)は定数でない2つの整数係数多項式の積で表されないことを証明せよ。したがって問題2-10より、有理数係数多項式として既約である。この既約性の判定法をアイゼンシュタインの既約判定法という。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
>(原始元の最小多項式が8次であることを利用してもよい(問題8-6)。)
すぐ上の問題8-6bの(2)からβはf(x)=x⁴-2の原始元で、(3)からβを含んだ既約多項式はg(x)=x⁸+28x⁴+2500なので、
「f(x)の原始元をβとし、βを根に持つ既約多項式をg(x)とします。またg(x)は重根を持たないとします。多項式の群Gfを
「βをg(x)の根に入れ換えて得られるf(x)の根の入れ換え」
からなる集合とします。」
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著p.153より
とあり、g(x)=x⁸+28x⁴+2500の根の数は8個なので、「Gfは8個の入れ換えからなる」という事。
>f(x)=x⁴-4x²+2のアイゼンシュタインの既約判定法(問題2-11)より既約である。
問題 2-11b
整数係数多項式f(x)=anx^n+・・・+a₁x+a₀が次をみたすとする:ある素数pに対して、
(ⅰ)anはpで割り切れない。
(ⅱ)a₀,・・・,an-₁はpで割り切れる。
(ⅲ)a₀はp²で割り切れない。
このときf(x)は定数でない2つの整数係数多項式の積で表されないことを証明せよ。したがって問題2-10より、有理数係数多項式として既約である。この既約性の判定法をアイゼンシュタインの既約判定法という。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
ある素数pを2とすると、
(ⅰ)1は2で割り切れないので、OK
(ⅱ)2,-4は2で割り切れるので、OK
(ⅲ)2は2²で割り切れないので、OK
(ⅰ)~(ⅲ)より、
f(x)=x⁴-4x²+2は既約であるという事。
>このときα=√(2+√2)はf(x)の原始元である。実際、ほかの根は-αと
√(2-√2)={√(2-√2)√(2+√2)}/√(2+√2)=√2/√(2+√2)=(α²-2)/α=α³-3α
と、-(α²-2)/αと表されるからである。
要は、f(x)の4つの根を全てαで表せるからである。
>最後の等式はα⁴-3α²=α²-2を用いた。
f(x)=x⁴-4x²+2にx=αを代入すると、f(α)=α⁴-4α²+2=0(αは根だから。)
∴α⁴-3α²=α²-2
>よって多項式の群はαをf(x)の根に入れ換える4個の入れ換えからなる群である。
上より、「αはf(x)の原始元」なので、αの最小多項式g(x)の根の入れ換えで多項式の群Gfが求まる(これももう何回もやったので解説は省略)が、αはf(x)の根でもありf(x)は既約多項式より、g(x)とf(x)は一致している(厳密には定数倍の違いはある)。
よって、αとf(x)の他の根との入れ換えで多項式の群が求まる。
よって、4個の入れ換えからなる群である。(f(x)の根が4個だから。)
因みに、x⁴-4x²+2の根をα,β,γ,δとすると、多項式の群は、
(α β γ δ)→(α β γ δ)(恒等入れ換え)
(α β γ δ)→(β γ δ α)
(α β γ δ)→(γ δ α β)
(α β γ δ)→(δ α β γ)
である。(巡回群になる。)
一応、裏取り。
「x⁴-4x²+2=0のガロア群は
Gal(ℚ(α)/ℚ)={e,σ,σ²,σ³}
となり、位数4の巡回群C₄と同型です。」
「ガロア理論の頂を踏む」石井俊全著p.335より
おまけ:
(コメント欄が凄い。)