解説
>Vの有限個の元b₁,b₂,…,bn(n≧1)の順序を考えた組を<b₁,b₂,…,bn>で表わす。
b₁,b₂,…,bnに同じものはない。その理由は、条件(1)b₁,b₂,…,bnは線型独立である。
だからである。
そこで、b₁,b₂,…,bnが線型独立ならばb₁,b₂,…,bnのうちに同じものはないという事を証明する。
証明
この対偶を取ると、
b₁,b₂,…,bnに同じものがあるならばb₁,b₂,…,bnは線型従属である。これを示せば良い。
そこで、同じものをb₁,b₂としても一般性を失わないので、
c₁b₁+(-c₁)b₂+0b₃+・・・+0bn=0とすると、c₁=c₂=・・・=cn=0以外で成り立つので、b₁,b₂,…,bnは線型従属である。
よって、示された。
定義(線型独立)
線型従属の否定を線型独立と言う。すなわち、a₁,a₂,…,akが線型独立とは
“c₁a₁+c₂a₂+…+ckak=0ならば必ずc₁=c₂=…=ck=0”
が成り立つことである。
「線型代数入門」有馬哲著より
>定義より明らかに、<b₁,b₂,…,bn>が基底であれば、b₁,b₂,…,bnの順序をいれかえたもの、たとえば<bn,…,b₂,b₁>もまた基底である
定義
(1)b₁,b₂,…,bnは線型独立である。
(2)Vの任意の元はb₁,b₂,…,bnの線型結合である。すなわち
V=Kb₁+Kb₂+…+Kbn
(1)の順序を入れ換えても線型独立は線型独立のままだし、(2)の線型結合の式の項を入れ換えても等式が成り立つからである。
>なぜなら、独立元のいれかえ定理((3.2.1)の(ⅲ))によって、m≦nかつn≦mとなるからである。
定理(3.2.1)
Vを数体K上の線型空間,a₁,a₂,…,an∈Vとする。
(ⅲ)(独立元のいれかえ)
b₁,…,br∈Ka₁+…+Kanかつb₁,…,brが線型独立ならば、a₁,…,anの中の適当なr個たとえば
a₁,…,arをb₁,…,brでおきかえて
Ka₁+…+Kan=Kb₁+…+Kbr+Kar+1+…+Kan
とすることができる。特にr≦nである。
一応、その前の部分も抜き出すと、
注意2.一つの線型空間Vの基底を構成する元の個数はどの基底についても等しい。すなわち<b₁,b₂,…,bn>と<b'₁,b'₂,…,b'm>がともにVの基底であればm=nである。なぜなら、独立元のいれかえ定理((3.2.1)の(ⅲ))によって、m≦nかつn≦mとなるからである。
まず、<b₁,b₂,…,bn>がVの基底である事から、基底の定義の(2)によって、Vの元を全てb₁,b₂,…,bnの線型結合の形で表せる。つまり、
b'₁,b'₂,…,b'm∈Kb₁+Kb₂+…+Kbn
よって、定理(3.2.1)の(ⅲ)(独立元のいれかえ)により、m≦nである。
次に、<b'₁,b'₂,…,b'm>がVの基底である事から、基底の定義の(2)によって、Vの元を全てb'₁,b'₂,…,b'mの線型結合の形で表せる。つまり、b₁,b₂,…,bn∈Kb'₁+Kb'₂+…+Kb'm
よって、定理(3.2.1)の(ⅲ)(独立元のいれかえ)により、n≦mである。
∴m=n
おまけ:
「1 だれがわれわれの聞いたことを/信じ得たか。主の腕は、だれにあらわれたか。
2 彼は主の前に若木のように、かわいた土から出る根のように育った。彼にはわれわれの見るべき姿がなく、威厳もなく、われわれの慕うべき美しさもない。
3 彼は侮られて人に捨てられ、悲しみの人で、病を知っていた。また顔をおおって忌みきらわれる者のように、彼は侮られた。われわれも彼を尊ばなかった。
4 まことに彼はわれわれの病を負い、われわれの悲しみをになった。しかるに、われわれは思った、彼は打たれ、神にたたかれ、苦しめられたのだと。
5 しかし彼はわれわれのとがのために傷つけられ、われわれの不義のために砕かれたのだ。彼はみずから懲らしめをうけて、われわれに平安を与え、その打たれた傷によって、われわれはいやされたのだ。」
「イザヤ書」第53章1節~5節(口語訳)