問題3.
任意の正方行列Xに対し、対称行列Aと交代行列BとがあってX=A+Bとなること、およびこの分解は一意的であることを示せ。また、t^(|C)=C,t^(|D)=-D,X=C+Dとなる行列C,Dがただ一組存在することを示せ。
解
分解可能性:(1/2)(X+t^X)=A,
(1/2)(X-t^X)=B,
(1/2)(X+t^(|X))=C,
(1/2)(X-t^(|X))=Dと置く。
明らかにt^A=A,t^B=-B,t^(|C)=C,
t^(|D)=-D,A+B=X,C+D=Xである。
一意性:つぎに、対称行列A',交代行列B',
t^(|C')=C',t^(|D')=-D'となる行列C',D'が存在して、X=A'+B'=C'+D'となったとする。
t^X=t^A'+t^B'=A'-B'だから、
A'=(1/2)(X+t^X),B'=(1/2)(X-t^X)となり、A'=A,B'=Bがわかる。
t^(|X)=t(|C')+t^(|D')=C'-D'だから、
C'=(1/2)(X+t^(|X)),D'=(1/2)(X-t^(|X))となりC'=C,D'=Dがわかる。すなわち分解は一意的である。
「演習詳解 線型代数」有馬哲・浅枝陽共著より
解説
>2A=X+t^X,2B=X-t^Xとおけ。
「線型代数入門」有馬哲著より
と置くと、A=(1/2)(X+t^X)
=(1/2)X+(1/2)t^X
この両辺の転置を取ると、
t^A=t^{(1/2)X+(1/2)t^X}
=t^{(1/2)X}+t^{(1/2)t^X}
=(1/2)t^X+(1/2)t^(t^X)
=(1/2)t^X+(1/2)X=A
∴t^A=A
よって、行列Aは対称行列。
「転置する演算が
t^(A+B)=t^A+t^B,t^(cA)=ct^A,
t^(t^A)=A
をみたすのは、明らかである。」
「線型代数入門」有馬哲著より
また、B=(1/2)(X-t^X)
=(1/2)X-(1/2)t^X
この両辺の転置を取ると、
t^A=t^{(1/2)X-(1/2)t^X}
=t^{(1/2)X}-t^{(1/2)t^X}
=(1/2)t^X-(1/2)t^(t^X)
=(1/2)t^X-(1/2)X=-B
∴t^B=-B
よって、行列Bは交代行列。
ところで、2A=X+t^X,2B=X-t^X
より、2A+2B=2X ∴X=A+B
よって、任意の正方行列Xに対し、対称行列Aと交代行列BとがあってX=A+Bとなる事が示された。
次に、一意性を証明する。
対称行列A',交代行列B'が存在して、
X=A'+B'が成り立つとする。(t^A'=A',t^B'=-B')
この両辺の転置を取ると、
t^X=t^(A'+B')=t^A'+t^B'=A'-B'
∴X+t^X=A'+B'+(A'-B')=2A'
∴A'=(1/2)X+(1/2)t^X=A
∴A'=A———①
また、X-t^X=A'+B'-(A'-B')=2B'
∴B'=(1/2)X-(1/2)t^X=B
∴B'=B———②
①,②より、一意性が示された。
>2C=X+t^(|X),2D=X-t^(|X)とおけ。
「線型代数入門」有馬哲著より
と置くと、
C=(1/2)X+(1/2)t^(|X)
この両辺の共役を取ると、
|C=|{(1/2)X+(1/2)t^(|X)}
=|{(1/2)X}+|{(1/2)t^(|X)}
=(1/2)|X+(1/2)|{t^(|X)}
=(1/2)|X+(1/2){t^(||X)}
=(1/2)|X+(1/2)t^X
∴|C=(1/2)|X+(1/2)t^X
この両辺の転置を取ると、
t^(|C)=t^{(1/2)|X+(1/2)t^X}
=t^{(1/2)|X}+t^{(1/2)t^X}
=(1/2)t^(|X)+(1/2)t^(t^X)
=(1/2)t^(|X)+(1/2)X=C
∴t^(|C)=C———③
また、D=(1/2)X-(1/2)t^(|X)より、
この両辺の共役を取ると、
|D=|{(1/2)X-(1/2)t^(|X)}
=|{(1/2)X}-|{(1/2)t^(|X)}
=(1/2)|X-(1/2)|{t^(|X)}
=(1/2)|X-(1/2){t^(||X)}
=(1/2)|X-(1/2)t^X
∴|D=(1/2)|X-(1/2)t^X
この両辺の転置を取ると、
t^(|D)=t^{(1/2)|X-(1/2)t^X}
=t^{(1/2)|X}-t^{(1/2)t^X}
=(1/2)t^(|X)-(1/2)t^(t^X)
=(1/2)t^(|X)-(1/2)X=-D
∴t^(|D)=-D———④
また、2C=X+t^(|X),2D=X-t^(|X)より、2C+2D=2X ∴X=C+D
よって、任意の正方行列Xに対し、t^(|C)=C,t^(|D)=-Dとなる行列があって、X=C+Dとなる事が示された。
次に一意性を証明する。
t^(|C')=C',t^(|D')=-D'となる行列C',D'が存在して、X=C'+D'が成り立つとする。
この両辺の共役を取ると、
|X=|(C'+D')=|C'+|D'
また、この両辺の転置を取ると、
t^(|X)=t^(|C'+|D')=t^(|C)+t^(|D)
=C'-D'
∴X+t^(|X)=2C'
∴C'=(1/2)X+(1/2)t^(|X)=C
(C=(1/2)X+(1/2)t^(|X)より)
また、X-t^(|X)=2D'
∴D'=(1/2)X-(1/2)t^(|X)=D
(D=(1/2)X-(1/2)t^(|X)より)
∴C'=C,D'=D
よって、一意性が示された。
ちゃんと読めば簡単ですが、「明らかにt^A=A,t^B=-B,t^(|C)=C,
t^(|D)=-D,A+B=X,C+D=Xである。」は凄いですね。教える気全くなし。もっとも、大学は自分で学びに行く所だと私も思っていますが。
(30年前もこういう塾があったら良かったのに。
https://nekonotezemi.com/mathematics/?gad_source=1&gclid=EAIaIQobChMIz8yPutHEigMVURJ7Bx2tuzaCEAAYASAAEgIon_D_BwE
https://kyushinjuku.com/course/daigakufollow/math/)
おまけ: