問題1
有理数体ℚ上の行ベクトル空間ℚnにおいて、部分集合W={(ai)1≦i≦n|a₁,a₂,…,anは整数}は部分空間であるか。
解答
x,y∈Wとすると、x=(x₁ x₂ … xn),
y=(y₁ y₂ … yn)
∴x+y=(x₁ x₂ … xn)+(y₁ y₂ … yn)
=(x₁+y₁ x₂+y₂ … xn+yn)
xi+yi∈ℤより、x+y∈W
また、a∈ℚ,x∈Wに対して、
ax=a(x₁ x₂ … xn)=(ax₁ ax₂ … axn)
ところで、aは有理数より、axi∉ℤ ∴ax∉W
よって、部分空間の条件を満たさないので、Wはℚnの部分空間ではない。
答
No
「線型代数入門」有馬哲著より
よって、OK。
問題2
Kを数体とし、K値数列全体のなすK線型空間ℱ(ℕ,K)において、
W₁={{an}∈ℱ(ℕ,K)|an+2-2an+1-3an=0}
W₂={{an}∈ℱ(ℕ,K)|an+1-3an=0}
とおくと、W₁とW₂は部分空間で、W₂⊆W₁である。
解答
{an},{bn}∈W₁とすると、
an+2-2an+1-3an=0
bn+2-2bn+1-3bn=0
ここで、{an}+{bn}がW₁に入るかどうか判定するために、an+2+bn+2-2(an+1+bn+1)-3(an+bn)を調べると、
=an+2-2an+1-3an+(bn+2-2bn+1-3bn)=0+0=0
∴{an}+{bn}∈W₁———①
また、c∈K,{an}∈W₁に対して、c{an}={can}より、(can+2)-2(can+1)-3(can)を調べると、
=c(an+2-2an+1-3an)=c・0=0
∴{can}∈W₁ ∴c{an}∈W₁———②
①,②より、部分空間の条件を満たすので、W₁はK線型空間ℱ(ℕ,K)の部分空間である。
また、{an},{bn}∈W₂とすると、
an+1-3an=0
bn+1-3bn=0
ここで、{an}+{bn}がW₂に入るかどうか判定するために、an+1+bn+1-3(an+bn)を調べると、
=an+1-3an+(bn+1-3bn)=0+0=0
∴{an}+{bn}∈W₂———③
また、c∈K,{an}∈W₂に対して、c{an}={can}より、(can+1)-3(can)を調べると、
=c(an+1-3an)=c・0=0
∴{can}∈W₂ ∴c{an}∈W₂———④
③,④より、部分空間の条件を満たすので、W₂もK線型空間ℱ(ℕ,K)の部分空間である。
また、W₁={{an}∈ℱ(ℕ,K)|an+2-2an+1-3an=0}から、
an+2-2an+1-3an=0
∴an+1-3an=-an+2+3an+1———☆
W₂={{an}∈ℱ(ℕ,K)|an+1-3an=0}から、
an+1-3an=0———☆☆
ここで、☆の右辺を0にすると、☆☆になる。
つまり、その時、W₁=W₂でその他の場合もあるので、W₁⊇W₂である。
(私のオリジナルなので自己責任でお願いします。)
答
略。
「線型代数入門」有馬哲著より
次の文章を解説して下さい。
問題3
数体KをK自身の上の線型空間と見るとき、Kは真部分空間を持たないことを示せ。
解答
K⊇Wが部分空間≠{0}のとき、W∋a≠0に対し1=a^-1a∈W ∴K=W
「線型代数入門」有馬哲著より
解説
>K⊇Wが部分空間≠{0}のとき
Kの部分空間をWとする。ところで、線型空間Kは必ず部分空間{0}とKを持つ。
「{0}およびV自身は、つまらない例であるが、確かにVの部分空間に違いない。これら以外の部分空間を真部分空間という。」
「線型代数入門」有馬哲著p.17より
そこで、Wが{0}でないとするとKしかない(Kである)事を証明すれば、「Kは真部分空間を持たないこと」が証明される訳である。
>W∋a≠0
上よりW≠{0}のとき、Wは部分空間でWは空集合ではないので、0以外の元aを持つ。(Wは0を含んでも良い。というより部分空間だから0を含む。)
命題(1.3.1)
Vを数体K上の線型空間とする。Vの空でない部分集合Wが部分空間であるために、次の条件がみたされることは必要充分である。(続きは省略。)
「線型代数入門」有馬哲著より
>W∋a≠0に対し1=a^-1a∈W
a∈W⊆Kよりa∈K ところで、Kは数体より乗法逆元を含む。∴a^-1∈K(a≠0より)
定義
複素数の集合ℂの部分集合Kが0と1を含み、ℂの加法と乗法に関して閉じているときKを数体と言う。すなわち、K⊆ℂが数体とは
数体の条件
(ⅰ)x,y∈Kならばx+y∈K,-x∈K
(ⅱ)x,y∈Kならばxy∈K また、x≠0ならばx^-1∈K
(ⅲ)0,1∈K
をみたすことである。
「線型代数入門」有馬哲著より
また、a∈W,a^-1∈Kに対してWは部分空間より、
a^-1a∈W(スカラー倍について閉じているという事。部分空間の条件(ⅱ))
部分空間の条件
(ⅰ)x,y∈Wならばx+y∈W
(ⅱ)x∈W,a∈Kならばax∈W
「線型代数入門」有馬哲著より
∴1∈W
>1=a^-1a∈W ∴K=W
よって、Kの任意の元xに対して、部分空間の条件(ⅱ)により、x・1∈W ∴x∈W
よって、x∈Kならばx∈W
よって、K⊆W———①
ところで、初めに「Kの部分空間をW」としたので、
K⊇W———②
①,②より、K=W
よって、W=Kで、「そこで、Wが{0}でないとするとKしかない(Kである)事を証明すれば、「Kは真部分空間を持たないこと」が証明される訳である」から、
Kは真の部分空間を持たない事が示された。
凄い行間埋めでしたね。因みに、「演習詳解 線型代数」有馬哲・浅枝陽共著の力を借りました。(それがあっても結構大変。笑)
おまけ: