解説
>図7.3 σ₃によってζ,…,ζ⁶が入れ換わる様子
ζ→ζ³→ζ²→ζ⁶→ζ⁴→ζ⁵→ζ(注:本当は輪のような図になっているが書けないので直線にした。)
σ₁=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)
(本当は2段で1つの元だがこう表す。)
この右のζをζ³にすると、
σ₃=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ³ ζ⁶ ζ⁹ ζ^12 ζ^15 ζ18)=(ζ³ ζ⁶ ζ² ζ⁵ ζ ζ⁴)
(ζ⁷=1より)
∴σ₃=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ³ ζ⁶ ζ² ζ⁵ ζ ζ⁴)
これを見ると、ζ→ζ³,ζ³→ζ²,ζ²→ζ⁶,ζ⁶→ζ⁴,ζ⁴→ζ⁵,ζ⁵→ζとなっている事が分かるだろう。よって、ζ→ζ³→ζ²→ζ⁶→ζ⁴→ζ⁵→ζという事。
>ここでζの式を分類します。入れ換えのなす群G={σ₁,…,σ₆}の部分群は、Gの元がσ₃のべきで表されることから、次の4つです(図7.4参照):
G={σ₁,…,σ₆},H={σ₁,σ₂,σ₄},L={σ₁,σ₆},N={σ₁}
前回p=5の時は、G={σ₁,σ₂,σ₃,σ₄}の部分群は4の約数の個数{1,2,4}から3個(問題4-9から)としたのに、同じ事は使いたくないようで図での解説。(次の項で解説する。)
問題 4-9b
群Gが1つの元のべきで生成されるとき、すなわちGのある元gによって、Gのほかの元がすべてg^k(kは整数)と表されるとき、Gを巡回群という。巡回群がn個の元からなるときn次巡回群という次の問いに答えよ。
(1)は省略。
(2)Gをn次巡回群とする。nの約数dに対して、d個の元からなるGの部分群が一意的に存在することを証明せよ。
今回は、Gの元が全てσ₃のべき乗で表されるので巡回群であり、Gの元の個数は6である。よって、6の約数の個数は{1,2,3,6}の4個より、Gの部分群は4個である。つまり、G={σ₁,…,σ₆},H={σ₁,σ₂,σ₄},L={σ₁,σ₆},N={σ₁}という事。
>図7.4 群と部分群
図は2つあり、1つの図は正六角形の頂点にσ₁,σ₃,σ₂,σ₆,σ₄,σ₅の順番に振ってあり、点線で正三角形σ₁σ₂σ₄がH,実線で正三角形σ₃σ₅σ₅がσ₃H。
もう一つの図も正六角形の頂点にσ₁,σ₃,σ₂,σ₆,σ₄,σ₅の順番に振ってあり、実線で直線σ₁σ₆がL,点線でσ₃σ₄がσ₃L,鎖線でσ₂σ₅がσ₂L。
という図。
部分群には必ず単位元が必要なので、この図の中でHとLだけである。ただし、GとNも部分群なので、4個である。点線や鎖線は群ではないが、類別できるという事が言いたいのかもしれない。(ここでは関係ないが。)
G=H∪σ₃H(H∩σ₃H=φ)
G=L∪σ₂L∪σ₃L(L∩σ₂L=φ,σ₂L∩σ₃L=φ,L∩σ₃L=φ)
>これらの群で不変な式は次の形になります:
Gで不変:有理数
Hで不変:a(ζ+ζ²+ζ⁴)+b(ζ³+ζ⁶+ζ⁵)
Lで不変:a(ζ+ζ⁶)+b(ζ³+ζ⁴)+c(ζ²+ζ⁵)
Nで不変:aζ+bζ³+cζ²+dζ⁶+eζ⁴+fζ⁵
p=5の時は、「Gで不変は有理数」は事細かく解説されていたが、今回はスルーのようである。一応、次の事だけ挙げておこう。
(5)すべての入れ換えで不変な根の式
α₁,…,αsの式において、ζをζ^k(kはnと互いに素)に置き換えた値がすべて等しいなら、その式の表す値は有理数です。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
Hで不変やLで不変などもp=5の時と同じなのでスルーされているが、Hで不変だけやっておこう。
H={σ₁,σ₂,σ₄}で、
σ₁=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)
σ₂=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ² ζ⁴ ζ⁶ ζ⁸ ζ^10 ζ^12)=(ζ² ζ⁴ ζ⁶ ζ ζ³ ζ⁵)
σ₄=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ⁴ ζ⁸ ζ^12 ζ^16 ζ^20 ζ^24)=(ζ⁴ ζ ζ⁵ ζ² ζ⁶ ζ³)
ところで、Φ7(x)の根の式は、
aζ⁶+bζ⁵+cζ⁴+dζ³+eζ²+fζで表される。
まず、σ₂の変換を見ると、
(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ² ζ⁴ ζ⁶ ζ ζ³ ζ⁵)なので、
aζ⁶+bζ⁵+cζ⁴+dζ³+eζ²+fζは、
aζ⁵+bζ⁵+cζ+dζ⁶+eζ⁴+fζ²に変換される。これが不変なので、
aζ⁶+bζ⁵+cζ⁴+dζ³+eζ²+fζ
=aζ⁵+bζ³+cζ+dζ⁶+eζ⁴+fζ²とすると、
(a-d)ζ⁶+(b-a)ζ⁵+(c-e)ζ⁴+(d-b)ζ³+(e-f)ζ²+(f-c)ζ=0
∴a=b=d,c=e=f
よって、aζ⁶+bζ⁵+cζ⁴+dζ³+eζ²+fζに代入すると、
aζ⁶+aζ⁵+cζ⁴+aζ³+cζ²+cζ
=a(ζ⁶+ζ⁵+ζ³)+c(ζ⁴+ζ²+ζ)
よって、aとcをbとaに変えて、ζの順番を直すと、
a(ζ+ζ²+ζ⁴)+b(ζ³+ζ⁶+ζ⁵)と一致するのでOK。
次に、σ₄の変換を見ると、
(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ⁴ ζ ζ⁵ ζ² ζ⁶ ζ³)より、
aζ⁶+bζ⁵+cζ⁴+dζ³+eζ²+fζは、
aζ³+bζ⁶+cζ²+dζ⁵+eζ+fζ⁴に変換される。これが不変なので、
aζ⁶+bζ⁵+cζ⁴+dζ³+eζ²+fζ
=aζ³+bζ⁶+cζ²+dζ⁵+eζ+fζ⁴とすると、
(a-b)ζ⁶+(b-d)ζ⁵+(c-f)ζ⁴+(d-a)ζ³+(e-c)ζ²+(f-e)ζ=0
∴a=b=d,c=e=f
以後、σ₂の場合と同じ。
よって、Hで不変な式は、
a(ζ+ζ²+ζ⁴)+b(ζ³+ζ⁶+ζ⁵)でOK。
>正確に述べると、nq周期からn周期を求めれば(qは素数)、pに関して帰納的に、すべての周期がべき根を用いて求められます(問題9-8参照)。
問題9-8の(2)に、
問題 9-8b
pを奇素数とし、ζ,ηをそれぞれ1の原始p乗根,1の原始p-1乗根とする。aを(ℤ/pℤ)^×の原始根とする。また定数をηのすべての式としたときのΦp(x)の群をGfとおく。このときGfはζをζ^aに取り換える根の入れ換えσで生成される(問題9-6,9-7)。
次の問いに答えよ。
(1)ξj=η^jζ^a+η^2jζ^a²+…+η^(p-1)ζ^a^(p-1)(j=1,…,p-1)とおく。このとき根の入れ換えσによりξjはη^-jξjとなることを示せ。
(2)ζはηの式のべき乗と加減乗除で表されることを示せ。
とあり、さらに解答欄に、「(2)より「1のn乗根は(いくつかの)べき根の式で表される」ことがわかる。これをnに関する帰納法で示す。」とあるので、「pに関して帰納的に、すべての周期がべき根を用いて求められます」という事だろう。
>p=7の場合に、具体的に説明します。
3周期ξ=ζ+ζ²+ζ⁴,η=ζ³+ζ⁶+ζ⁵は、ξ+η,ξηがGで不変なので、
x²-(ξ+η)x+ξη=x²+x+2=0
を解いて求められます。ここでξ+η,ξηは
ξ+η=(ζ+ζ²+ζ⁴)+(ζ³+ζ⁶+ζ⁵)=-1
ξη=(ζ+ζ²+ζ⁴)(ζ³+ζ⁶+ζ⁵)
=(ζ⁴+ζ⁷+ζ⁶)+(ζ⁵+ζ⁸+ζ⁷)+(ζ⁷+ζ^10+ζ⁹)
=3+(ζ⁴+ζ⁶+ζ⁵+ζ+ζ³+ζ²)=2
と計算されます。よってξ,ηが求められます:
ξ=(-1+√7i)/2,η=(-1-√7i)/2
ξ=ζ+ζ²+ζ⁴はH={σ₁,σ₂,σ₄}で不変。
σ₂=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ² ζ⁴ ζ⁶ ζ ζ³ ζ⁵)
σ₄=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ⁴ ζ ζ⁵ ζ² ζ⁶ ζ³)
σ₂は、ζ→ζ²→ζ⁴→ζ,ζ³→ζ⁶→ζ⁵→ζ³
σ₄は、ζ→ζ⁴→ζ²→ζ,ζ³→ζ⁵→ζ⁶→ζ³より、
σ₂(ξ)=σ₂(ζ+ζ²+ζ⁴)=ζ²+ζ⁴+ζ=ξ,
σ₄(ξ)=σ₄(ζ+ζ²+ζ⁴)=ζ⁴+ζ+ζ²=ξ
だから。
また、η=ζ³+ζ⁶+ζ⁵もHで不変。
σ₂(η)=σ₂(ζ³+ζ⁶+ζ⁵)=ζ⁶+ζ⁵+ζ³=η
σ₄(η)=σ₄(ζ³+ζ⁶+ζ⁵)=ζ⁵+ζ³+ζ⁶=η
だから。
また、ξ=ζ+ζ²+ζ⁴はσ₃,σ₆,σ₅でηに変換される。
σ₃=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ³ ζ⁶ ζ⁹ ζ^12 ζ^15 ζ^18)=(ζ³ ζ⁶ ζ² ζ⁵ ζ ζ⁴)
σ₆=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ⁶ ζ^12 ζ^18 ζ^24 ζ^30 ζ^36)=(ζ⁶ ζ⁵ ζ⁴ ζ³ ζ² ζ)
σ₅=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ⁵ ζ^10 ζ^15 ζ^20 ζ^25 ζ^30)=(ζ⁵ ζ³ ζ ζ⁶ ζ⁴ ζ²)より、
σ₃(ξ)=σ₃(ζ+ζ²+ζ⁴)=ζ³+ζ⁶+ζ⁵=η
σ₆(ξ)=σ₆(ζ+ζ²+ζ⁴)=ζ⁶+ζ⁵+ζ³=η
σ₅(ξ)=σ₅(ζ+ζ²+ζ⁴)=ζ⁵+ζ³+ζ⁶=η
また、η=ζ³+ζ⁶+ζ⁵はσ₃,σ₆,σ₅でξに変換される。
σ₃=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ³ ζ⁶ ζ² ζ⁵ ζ ζ⁴)
σ₆=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ⁶ ζ⁵ ζ⁴ ζ³ ζ² ζ)
σ₅=(ζ ζ² ζ³ ζ⁴ ζ⁵ ζ⁶)→(ζ⁵ ζ³ ζ ζ⁶ ζ⁴ ζ²)
σ₃(η)=σ₃(ζ³+ζ⁶+ζ⁵)=ζ²+ζ⁴+ζ=ξ
σ₆(η)=σ₆(ζ³+ζ⁶+ζ⁵)=ζ⁴+ζ+ζ²=ξ
σ₅(η)=σ₅(ζ³+ζ⁶+ζ⁵)=ζ+ζ²+ζ⁴=ξ
だから。
まず、ξ,ηは共にH={σ₁,σ₂,σ₄}で不変なので、ξ+η,ξηも不変。
次に、{σ₃,σ₆,σ₅}でξはηに、ηはξに変換されるので、ξ+η,ξηは不変。
よって、G={σ₁,…,σ₆}でξ+η,ξηは不変という事。
続きは次回。
おまけ: