訂正
>x^p-aの根はαζ(ζ^p=1をみたす)の形である。
これはx^p-aが既約多項式だから。
命題10.1(多項式x^p-aの群)
pを素数とし、1の原始p乗根ζは定数であるとする。x^p-aが既約であるとき(つまりどの根も定数でないとき)、この多項式の群は、x^p-aの根αに対して
σi(α)=αζ^i,i=0,1,…,p-1
をみたすp個の入れ換えσ₀,…,σp-1からなる。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
因みに、(3)のx^p-a(pは素数,aは定数)は既約多項式とは書かれていない。
これは別に既約多項式とかは関係ないですね。
例えば、x⁴-4=0の解は(x²-2)(x²+2)=0
∴x=±√2,±√2i
∴x=√2,√2i,√2i²,√2i³
複素平面の単位円上のx^n-1の根(p.118)を考えれば当然ですね。ただし、「x^p-aの根はαζ」の意味が「αζ^i,i=0,1,…,p-1」と同じかどうかはよく分からない。
解説の続き
問題 10-13b
次の問いに答えよ。
(1)1,2,3,4,5の入れ換え
( i j k m n)
( j k i m n)
(注:本当は2段で1つの元。)
を(ijk)と表す。次の等式を示せ:
(123)=(125)(134)(152)(143)
(2)本問と(3)では、1のべき根はすべて定数であるとする。既約5次多項式f(x)の群GfがS5であるとする(ここでf(x)の根α₁,…,α₅の入れ換えを1,…,5の入れ換えとみなす)。既約多項式x^p-a(pは素数,aは定数)の根αがf(x)の根の式で表されるならば、p=2であり、αを変えない入れ換えはA5に入ることを示せ。
(3)既約5次多項式f(x)の群GfがA5であるとする((2)と同様に根の入れ換えを1,…,5の入れ換えとみなす)。多項式x^p-a(pは素数,aは定数)の根αがf(x)の根の式で表されるならば、αは定数であることを示せ。
解答
(1)略。(1,2,3,4,5をi,k,j,m,nと読み替えれば、任意の(ijk)に対して
(ijk)=(ijn)(ikm)(inj)(imk)が成り立つ。)
(2)x^p-aの根はαζ(ζ^p=1をみたす)の形である。そこでGfの元σに対してσ(α)=ζσ・α(注:ζσのσは添字)((ζσ)^p=1)とおく。
このときGfの元σ,τに対して、ζστ=ζσζτが成り立つ。
実際、στ(α)=σ(ζτ・α)=ζτ・σ(α)=ζτ・ζσ・αだからである(2番目の等号は1のべき根が定数であることより従う)。
とくにζσ・ζσ-1=ζe=1(eは恒等入れ換え)である。
いま1,2だけを交換する入れ換えσ(互換)はσ²=eをみたすので、(ζσ)²=1である。よってζσ=±1である。またi,jを交換する互換τは、1,2をi,jに読み替えるとτ=μσμ^-1の形に表される。
よってζτ=ζμζσζμ^-1=ζσ(ζμζμ^-1)=ζσである。したがってどの互換τに対してもζτはすべて等しく、1か-1である。
任意の入れ換えμをs個の互換の積で表せば(問題5-8参照)、ζμ=(ζσ)^sがわかる。x^p-aは既約なので、αは定数でなくζσ=-1であり、よってp=2である。またαを変えないμはsが偶数のときだから、μはA5に入る。
(3)(1)の解答で述べたとおり、σ=(ijk),τ=(ijn),μ=(ikm)とおくと、
σ=τμτ²μ²=τμτ^-1μ^-1が成り立つ(τ³=μ³=eよりτ²=τ^-1,μ²=μ^-1である)。
したがってζσを(2)の解答のように定めれば、ζσ=ζτζμζτ^-1ζμ^-1=(ζτζτ^-1)(ζμζμ^-1)=1である。
A5の任意の入れ換えσは(ijk)の形の入れ換えの合成で表されるので(問題5-9)、ζσはつねに1であり、αを変えない。ガロワ対応よりαは定数である。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
>実際、στ(α)=σ(ζτ・α)=ζτ・σ(α)=ζτ・ζσ・αだからである(2番目の等号は1のべき根が定数であることより従う)。
σ(ζτ・α)=ζτ・σ(α)は、定数だから外に出せるという事。
>またi,jを交換する互換τは、1,2をi,jに読み替えるとτ=μσμ^-1の形に表される。
μ=( 1 2 3 4 5)
( a b c d e)
(注:本当は2段で1つの元。)
と置くと、
μ^-1=( a b c d e)
( 1 2 3 4 5)
また、σ=( 1 2 3 4 5)
( 2 1 3 4 5)
(「1,2だけを交換する入れ換えσ」だから。)
とすると、
μσμ^-1
=(1 2 3 4 5)(1 2 3 4 5)(a b c d e)
(a b c d e)(2 1 3 4 5)(1 2 3 4 5)
=(a b c d e)
(b a c d e)
(一番右の括弧のaから、a→1→2→1→b,
b→2→1→a,c→3→3→c,
d→4→4→d,e→5→5→eと求める。)
よって、aとbだけ入れ換わった変換でa~eは1~5のどれかなので、どれか2つが入れ換わるのでOK。
>よってζτ=ζμζσζμ^-1=ζσ(ζμζμ^-1)=ζσである。したがってどの互換τに対してもζτはすべて等しく、1か-1である。
「Gfの元σに対してσ(α)=ζσ・α(注:ζσのσは添字)((ζσ)^p=1)とおく」でτ=μσμ^-1を変換しただけ。そして、ζμζσζμ^-1=ζσ(ζμζμ^-1)は定数だから順序を変えただけ。
また、ζσ=±1だったので、ζτ=ζσにより、
「ζτはすべて等しく、1か-1である」という事。
>任意の入れ換えμをs個の互換の積で表せば(問題5-8参照)、ζμ=(ζσ)^sがわかる。
問題 5-8b
1,…,nの任意の入れ換えは、ちょうど2個だけ交換する入れ換えの積で表されることを示せ。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
自明とする。
>x^p-aは既約なので、αは定数でなくζσ=-1であり、よってp=2である。
x^p-aが既約でないとするとαは定数の可能性があり、定数とするとσは恒等入れ換えになりζσ=1(σ=e)なので、既約ならばαは定数の可能性はなくζσ=-1である。一応、補足で命題10.1の括弧の中、
命題10.1(多項式x^p-aの群)
pを素数とし、1の原始p乗根ζは定数であるとする。x^p-aが既約であるとき(つまりどの根も定数でないとき)、この多項式の群は、x^p-aの根αに対して
σi(α)=αζ^i,i=0,1,…,p-1
をみたすp個の入れ換えσ₀,…,σp-1からなる。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
また、ζσ=±1で2つだけなので、p=2である。
>またαを変えないμはsが偶数のときだから、μはA5に入る。
ζμ=(ζσ)^sにζσ=-1を代入して1になるのはsが偶数の時だけだから。
また、「σ(α)=ζσ・α(注:ζσのσは添字)((ζσ)^p=1)とおく」のζσ=1の時だけ「αを変えない」という事。
定義(対称群,交代群)
1,…,nの入れ換えのなす群をn次対称群といい、Snと表す。ちょうど2個だけ交換する入れ換えを偶数個合成した入れ換えのなす集合は、Snの部分群である。この部分群をn次交代群といい、Anと表す。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
よって、A5に入るという訳である。(偶置換という事。)
>(1)の解答で述べたとおり、σ=(ijk),τ=(ijn),μ=(ikm)とおくと、
σ=τμτ²μ²=τμτ^-1μ^-1が成り立つ(τ³=μ³=eよりτ²=τ^-1,μ²=μ^-1である)。
(1)の解答より、
(ijk)=(ijn)(ikm)(inj)(imk)
よって、σ=τμ○○である。
そこで、
τ=(ijn)=(i j k m n)
(j n k m i)
(注:i,j,nの位置だけ、
( i j k m n)
( j k i m n)
(注:本当は2段で1つの元。)
を(ijk)と表す。(上より引用)
を使った。(2番目3番目を1番目2番目,1番目を3番目に順繰りと移動させる。)
τ²=(ijn)²
=(i j k m n)
(n i k m j)
(再び、i,n,jの位置だけ同じように順繰りと移動させた。)
また、(inj)=(in)(nj)で、
( i j k m n)
( i j k m n)
を変換すると、
( i j k m n)
( i n k m j) (nj)で入れ換えた
( i j k m n)
( n i k m j) (in)で入れ換えた
よって、τ²=(inj)である。
μ²=(im k)も同様に示せる。
よって、(ijk)=(ijn)(ikm)(inj)(imk)
から、σ=τμτ²μ²である。
また、「τ³=μ³=e」は順繰りを3回やると元に戻る事から分かる。
>A5の任意の入れ換えσは(ijk)の形の入れ換えの合成で表されるので(問題5-9)、ζσはつねに1であり、αを変えない。ガロワ対応よりαは定数である。
問題 5-9b
Anは
( a b c d e …(あとは変えない))
( b c a d e …(あとは変えない))
(注:本当は2段で1つの元。)
(この形の入れ換えを(abc)と略記する)の形で入れ換えで生成されることを示せ。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
「ζσを(2)の解答のように定めれば、ζσ=ζτζμζτ^-1ζμ^-1=(ζτζτ^-1)(ζμζμ^-1)=1である」となり、「σ(α)=ζσ・α(注:ζσのσは添字)((ζσ)^p=1)とおく」にζσ=1を代入すると、σ(α)=α
よって、恒等入れ換えに対応するのは根の式全体のような気がするが、全ての変換(Gf)で変わらないのは定数のみという意味なのだろう。
念のため、あくまでも参考程度です。
おまけ: