問題 10-5bの解説の見直し
問題 10-5b
有理数係数多項式x⁵-2の群がAGL(1,5)と同型であることを示せ。
解答
α=⁵√2(実数),ζ=e^(2πi/5)とおくと、f(x)=x⁵-2の根はα,αζ,αζ²,αζ³,αζ⁴である。
ζ=(αζ)/αなので、多項式の群Gfは、Φ5(x)の群(4次巡回群と同型)を商群に持つ。
f(x)は既約なので、αの式を不変にする部分群HはGfにおいて指数5を持つ(∵Hの右傍系がf(x)の根と対応するから)。
よってGfに含まれる入れ換えの個数は20の倍数である。f(x)の根はα,αζの2つの根の式ですべて表されるので、|Gf|の条件と定理10.5の証明③より、GfはAGL(1,5)と同型である。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
定理10.5の証明③
f(x)の2つの根の式でほかの根が表されるとき、多項式の群に含まれる入れ換えの個数は高々p(p-1)個になります。実際、2個の根をどの根に入れ換えるかによって、根の入れ換えが決まるからです。このとき③は次の命題に帰着されます:
「根の入れ換えのなす群(p次対称群)の部分群Gが高々p(p-1)個の元からなり、さらにどの2つの根に対しても一方を他方に入れ換える入れ換えを含むとする。このときGに含まれる入れ換えはすべて1次式で定まる。」
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
2024/9/17 15:49の投稿と2024/9/28 15:30の投稿で解説していますが、今回見直してみます。
>ζ=(αζ)/αなので、多項式の群Gfは、Φ5(x)の群(4次巡回群と同型)を商群に持つ。
α,αζはf(x)=x⁵-2の根より、ζは問題9-5のβで、
問題 9-5b
多項式f(x)の群をGfとする。f(x)の根の式βが、Gfの根の入れ換え(すべて)により、異なる数β₁=β,…,βsになったとする。このときg(x)=(x-β₁)(x-β₂)…(x-βs)はβiの最小多項式であることを示せ。よってβiの最小多項式は重根を持たない。またs=degg(x)は、βを不変にする入れ換え全体のなすGfの部分群Hの指数(G:H)に等しいことを示せ。
全ての根の入れ換えでβ₁~βsを求めても良いが、g(x)はβiの最小多項式なので、ζの最小多項式でもある。
よって、x=ζとして両辺を5乗すると、
x⁵=1 ∴x⁵-1=0
∴(x-1)(x⁴+x³+x²+x+1)=0
ところで、g(x)は最小多項式より既約多項式であるので、g(x)=x⁴+x³+x²+x+1
また、Φ5(x)=x⁴+x³+x²+x+1と定理9.3より、
定理9.3(ガロワ対応(正規性))
多項式の群Gfの部分群Hについて、次は同値である。
(1)Hは、ある多項式g(x)のすべての根による式全体を不変にする部分群である。
(2)HはGfの正規部分群である。すなわちGfの任意の入れ換えσに対して、
Hσ=σH
である(Hに関する左傍系と右傍系は一致する)。
さらに、この対応においてg(x)の群Ggは商群Gf/Hと同型である。
Gg≃Gf/Hなので、「多項式の群Gfは、Φ5(x)の群(4次巡回群と同型)を商群に持つ」という事。
(2024/9/18 15:35の投稿より)
∴|Gg|=|Gf|/|H| また、|Gg|=4より、
4=|Gf|/|H| ∴|Gf|=4|H|
よって、Gfの位数は4の倍数である。———①
>f(x)は既約なので、αの式を不変にする部分群HはGfにおいて指数5を持つ(∵Hの右傍系がf(x)の根と対応するから)。
問題 9-5b
多項式f(x)の群をGfとする。f(x)の根の式βが、Gfの根の入れ換え(すべて)により、異なる数β₁=β,…,βsになったとする。このときg(x)=(x-β₁)(x-β₂)…(x-βs)はβiの最小多項式であることを示せ。よってβiの最小多項式は重根を持たない。またs=degg(x)は、βを不変にする入れ換え全体のなすGfの部分群Hの指数(G:H)に等しいことを示せ。
つまり、問題9-5のβを不変にする部分群Hは指数(G:H)を持ち、この値はdegg(x)=sで今回はαとβが一致している(f(x)の根の式βがαに当たりαはf(x)の根だから)のでこのf(x)とg(x)も一致しているので、f(x)の次数がsとなり、これはf(x)=x⁵-2の根の数より5となる。よって、「HはGfにおいて指数5を持つ」という事である。
2024/9/28 15:30より
∴|Gf|/|H'|=5
(①の所のHは「ある多項式g(x)のすべての根による式全体を不変にする部分群」で今回のHはg(x)(=f(x))の根の式を不変にする部分群なので、別物でH'とする。)
∴|Gf|=5|H'|
よって、Gfの位数は5の倍数である。———②
>よってGfに含まれる入れ換えの個数は20の倍数である。
①,②より、Gfの位数は20の倍数である。
よって、「Gfに含まれる入れ換えの個数は20の倍数である」という事。
>f(x)の根はα,αζの2つの根の式ですべて表されるので、|Gf|の条件と定理10.5の証明③より、GfはAGL(1,5)と同型である。
「f(x)=x⁵-2の根はα,αζ,αζ²,αζ³,αζ⁴であ」り、「f(x)の根はα,αζの2つの根の式ですべて表される」。例えば、αζ⁴=(αζ)⁴/α³など。
よって、
定理10.5の証明③
f(x)の2つの根の式でほかの根が表されるとき、多項式の群に含まれる入れ換えの個数は高々p(p-1)個になります。実際、2個の根をどの根に入れ換えるかによって、根の入れ換えが決まるからです。このとき③は次の命題に帰着されます:
「根の入れ換えのなす群(p次対称群)の部分群Gが高々p(p-1)個の元からなり、さらにどの2つの根に対しても一方を他方に入れ換える入れ換えを含むとする。このときGに含まれる入れ換えはすべて1次式で定まる。」
から、Gfの位数はp(p-1)以下でp=5を代入すると、Gfの位数は20以下である。
ここで、上の「Gfの位数は20の倍数である」が使われる。よって、Gfの位数は20である。
よって、定理10.5の証明③の後半より、「GfはAGL(1,5)と同型である」という事。
補足
問題 10-2b
pを素数とする。p次対称群の位数pの元σの生成する部分群H={e,σ,…,σ^(p-1)}を正規部分群に持つSpの部分群Nを調べる。本文のようにp次対称群の置換をp個の元0,1,…,p-1(Fpの元)の置換とみなし、σをσ(x)=x+1(x=0,1,…,p-1)とする。このときNは
AGL(1,p)={τ∈Sp;τ(x)=ax+b,ここでa≠0かつb=0,1,…,p-1}
に含まれることを示せ。この群を1次元アフィン一般線形群という。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
1次式で定まればAGL(1,p)という事。
別解(20の倍数を使わない場合)
f(x)=x⁵-2の係数をζの式に許してもf(x)は既約である(下に補足)。
また、αζ,αζ²,αζ³,αζ⁴はf(x)の根より、
f(αζ)=(αζ)⁵-2=ζ⁵(α)⁵-2=0
f(αζ²)=(αζ²)⁵-2=ζ^10(α)⁵-2=0
f(αζ³)=(αζ³)⁵-2=ζ^15(α)⁵-2=0
f(αζ⁴)=(αζ⁴)⁵-2=ζ^20(α)⁵-2=0
よって、f(x)の係数をζの式まで許すと根はαのみである。
ところで、αはf(x)の根で、また、αでf(x)の根を全て表せる(1つだけだが)ので、αはf(x)の原始元である(係数はζの式)。
よって、p.153のg(x)とf(x)は一致していて、
■多項式の群の構成(定理9.1(基本定理)の証明)
f(x)の原始元をβとし、βを根に持つ既約多項式をg(x)とします。また、g(x)は重根を持たないとします。多項式の群Gfを
「βをg(x)の根に入れ換えて得られるf(x)の根の入れ換え」
からなる集合とします。βの入れ換えによりf(x)の根の入れ換えが得られることは、次の「(1)の性質について」で説明します。(p.153より)
要は、このg(x)の根の数だけ群Gfの元の個数があるという事で、上よりこのg(x)とf(x)が一致しているので、今回はf(x)の根の数だけ群Hの元の個数があるという事である。なぜ、GfでなくHかと言うと、f(x)の係数をζの式まで拡張したので、ガロワ対応により群の方はGfの部分群Hに縮小されるからである。
よって、f(x)の根は全部で5個より、|H|=5となる。ところで、|Gg|=4(4次巡回群より)とGg≃Gf/Hより、|Gg|=|Gf|/|H|
∴4=|Gf|/5 ∴|Gf|=4・5=20
よって、Gfの位数は20である。
よって、定理10.5の証明③の後半より、「GfはAGL(1,5)と同型である」という事。よって、定理10.5の証明③の後半より、「GfはAGL(1,5)と同型である」という事。
補足:f(x)=x⁵-2の係数をζの式に許してもf(x)は既約である事。
f(x)=(x-⁵√2)(x-⁵√2ζ)(x-⁵√2ζ²)(x-⁵√2ζ³)(x-⁵√2ζ⁴)
この括弧のどの2つ,3つ,4つの組み合わせを展開しても無理数⁵√2²などは消えずに、全てを展開した時だけf(x)=x⁵-2となり無理数は消える。つまり、係数をζの式に拡張しても括弧が2つ以上ある場合は無理数が消えないので、既約多項式である。(念のため、ζの式の係数は有理数。)
以前に、私の解法が必要なのではないだろうかというのは大きな誤解でした。すみませんでした。(私の解法とは下の別解の事。)
おまけ: