解説
>(1)問題10-10(3)よりGに位数pの元が存在する。
問題 10-10b
pを素数とし、1,2,…,pの入れ換えのなす群Gが次の性質をみたすとする:「どの2つの数に対しても一方を他方に写す入れ換えが存在する。」次の問いに答えよ。
(1)Gに指数pの部分群Hが存在することを示せ。
(2)(1)のHに対して右H傍系σ₁H=H,σ₂H,…,σpHの元x₁,…,xpを1つずつとる。
(ⅰ)Gの各元gに対して、gx₁,…,gxpは各右H傍系に1つずつ含まれることを示せ。
(ⅱ){gx₁,…,gxp}(gはGの元)の形の集合は、(G:N)個あることを示せ。ここでNは{gx₁,…,gxp}={x₁,…,xp}をみたすgからなる部分群とする。
(3)Gに位数pの元が存在することを示せ。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
問題文に「(ⅱ)Fpの任意の元xに対して、0をxに入れ換える元がGにある。」とあり、これは問題10-10の「どの2つの数に対しても一方を他方に写す入れ換えが存在する。」と同じ意味(片方を0に固定するという事)なので、問題10-10(3)よりGに位数pの元が存在するという事。
>(2)Gにp個の元からなる部分群がただ1つしかないことを示せば十分である。
問題文に「(ⅰ)Gに含まれる元の個数はp(p-1)個以下である。
(ⅱ)Fpの任意の元xに対して、0をxに入れ換える元がGにある。」とあり、また、p.188に、
「根の入れ換えのなす群(p次対称群)の部分群Gが高々p(p-1)個の元からなり、さらにどの2つの根に対しても一方を他方に入れ換えを含むとする。このときGに含まれる入れ換えはすべて1次式で定まる。」
とあるので、問題文のGに含まれる入れ換えはすべて1次式で表される。
また、p.187~188に、
「部分群{e,σ,…,σ^(p-1)}を正規部分群に持つ群は、τ(x)=ax+b(a=1,2,…,p-1,b=0,1,…,p-1)の形の入れ換えからなります。」
とあり、これは1次式で表されているので、結局、問題文のGは部分群{e,σ,…,σ^(p-1)}を正規部分群に持つ群という事である。(厳密には、逆が成り立つ証明が必要な気もするが。)
つまり、Gは位数pの部分群を正規部分群に持つという事。
よって、位数pの部分群がただ1つしかなければそれが正規部分群であるという事を証明できるという事である。
>もし|C₁|=|C₂|=pをみたすGの異なる部分群C₁,C₂があったとする。C₁∩C₂はC₁,C₂の部分群なので(問題4-7)、(ラグランジュの定理より){e}に等しい。
位数pの部分群が2つあったとして背理法で示すという事。
定理4.4(ラグランジュの定理)
有限群Gの部分群Hに対して、Gに含まれる元の個数は、Hに含まれる元の個数にHの指数を掛けた数に等しい。すなわち
|G|=(G:H)|H|
が成り立つ。とくに|H|は|G|の約数である。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
C₁∩C₂はC₁,C₂の部分群なので、定理4.4のHをC₁∩C₂に見立て、GをC₁(またはC₂)に見立てると、|C₁|=(C₁:C₁∩C₂)|C₁∩C₂|
|C₁|=|C₂|=pでpは素数より、|C₁∩C₂|=1である。∴C₁∩C₂={e}
という事。
>よってC₁,C₂の各々の生成元x,yに対してx^iy^j(i,j=0,1,…,p-1)はp²個の相異なる元である。
なぜならx^iy^j=x^ky^mとすると左からx^-k,右からy^-jを掛けてx^(i-k)=y^(m-j)∈C₁∩C₂が得られ、これよりi=k,j=mがわかるからである。
i,j=0,1,…,p-1からiの個数×jの個数でp²としても良さそうだが、生成元x,yに対してx^i,y^jはそれぞれmodpだが、x^iy^jがmodpとは限らないからである。
そこで、「x^iy^j=x^ky^mとすると左からx^-k,右からy^-jを掛けてx^(i-k)=y^(m-j)∈C₁∩C₂が得られ」、
x^(i-k)∈C₁,y^(m-j)∈C₂より、
x^(i-k)=y^(m-j)∈C₁∩C₂という事。
そして、C₁∩C₂={e}より、i-k=m-j=0 ∴i=k,j=m
>これは|G|≦p(p-1)<p²に矛盾する。
問題文の条件「(ⅰ)Gに含まれる元の個数はp(p-1)個以下である。」からである。
よって、背理法により、位数pの部分群はただ1つしかない。
>(3)Spに含まれる位数pの元は、うまく読み替えるとσ(x)=x+1の形の入れ換えにできる(問題10-11参照)。
問題 10-11b
素数pに対して、p次対称群Spの位数pの元は
(a₁ a₂ … ap-1 ap)
(a₂ a₃ … ap a₁ )
(注:本当は1つの括弧で2段の1つの元。)
の形であることを示せ。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
全てを1つずらすという事である。p.187の図10.4参照。
>したがって(2)よりGにσが含まれると仮定してよい。このとき問題10-4よりAGL(1,p)に含まれる。
(2)より(1)ではないだろうか。
(1)Gは位数pの元σを持つことを示せ。
つまり、このσがσ(x)=x+1であるという事がようやく言えたという事。
また、問題10-4より問題10-2ではないだろうか。
問題 10-2b
pを素数とする。p次対称群の位数pの元σの生成する部分群H={e,σ,…,σ^(p-1)}を正規部分群に持つSpの部分群Nを調べる。本文のようにp次対称群の置換をp個の元0,1,…,p-1(Fpの元)の置換とみなし、σをσ(x)=x+1(x=0,1,…,p-1)とする。このときNは
AGL(1,p)={τ∈Sp;τ(x)=ax+b,ここでa≠0かつb=0,1,…,p-1}
に含まれることを示せ。この群を1次元アフィン一般線形群という。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
もっとも初めを(2)とすると、
(2)(1)の元σが生成するGの部分群HはGの正規部分群であることを示せ。
Gは位数pの正規部分群Hを含むので、問題10-4でも合うと思うが。
問題 10-4b
問題10-2のとおり、Nを、H⊂N⊂AGL(1,p)をみたす群とする。Spの部分群N'を正規部分群として含むならば、AGL(1,p)に含まれることを示せ。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
おまけ: