問題 9-6b
円分多項式Φn(x)の群Gは、nと互いに素なaに対して
σa:ζ→ζ^a(ζは1の原始n乗根)
で定まる根の入れ換えからなることを示せ。
またσaσb=σabを示し、Gの元の合成と、nと互いに素な2つの数a,bの積が対応することを示せ。
したがって[a]nをσaに対応させることにより、(ℤ/nℤ)^×はGと同型である。
解答
Φn(x)は有理数係数多項式として既約であり(定理7.1)、その原始元としてΦn(x)の根ζ(1の原始n乗根)をとる。よってGは、Φn(x)の根ζをζ^aに入れ換える入れ換えσa(aはnと互いに素)からなる。σaσbは、
(σaσb)(ζ)=σa(σb(ζ))=σa(ζ^b)=(ζ^a)^b
=ζ^ab=σab(ζ)
よりσabに等しい。またσa=σbはa≡b modnと同値なので、(ℤ/nℤ)^×からGへの写像[a]n→σaは全単射であり、群の積も対応している。
定理7.1(円分多項式の既約性)
Φn(x)は有理数係数多項式として既約である。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
解説の続き
>Φn(x)は有理数係数多項式として既約であり(定理7.1)、その原始元としてΦn(x)の根ζ(1の原始n乗根)をとる。
何故、Φn(x)が既約である事を言うかと言うと、次の「多項式の群の構成」による。
■多項式の群の構成
f(x)の原始元をβとし、βを根に持つ既約多項式をg(x)とします。またg(x)は重根を持たないとします。多項式の群Gfを
「βをg(x)の根に入れ換えて得られるf(x)の根の入れ換え」
からなる集合とします。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
円分多項式Φn(x)の群Gを求めるには、Φn(x)が既約多項式である必要があるからである。
また、ζがΦn(x)の原始元になる理由は、ζの累乗でΦn(x)の全ての根を表せるからである。
定義8.1(原始元)
重根を持たないn次多項式f(x)の原始元βとは、次の(1),(2)をみたす複素数のことである。以下においてα₁,・・・,αnをf(x)の根とする。
(1)βはα₁,・・・,αnの式で表される。
(2)α₁,・・・,αnはそれぞれβの式で表される。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
ζはζで表されているし、Φn(x)の根はζ,ζ²,・・・,ζ^nなので全てζで表せるからである。
>よってGは、Φn(x)の根ζをζ^aに入れ換える入れ換えσa(aはnと互いに素)からなる。
原始元ζを根に含む既約多項式を作ると、Φn(x)と一致する。
つまり、上の「多項式の群の構成」のf(x)=g(x)=Φn(x)である。
よって、多項式の群Gfは、
「βをg(x)の根に入れ換えて得られるf(x)の根の入れ換え」
より、
「ζをΦn(x)の他の根に入れ換えて得られるΦn(x)の根の入れ換え」
つまり、「Gは、Φn(x)の根ζをζ^aに入れ換える入れ換えσa(aはnと互いに素)からなる」という事である。
>(σaσb)(ζ)=σa(σb(ζ))=σa(ζ^b)=(ζ^a)^b
=ζ^ab=σab(ζ)
σa(ζ^b)=(ζ^a)^bの所、
(上より)「σa:ζ→ζ^a」は、括弧の中のものをa乗する訳ではなく、ζをζ^aに入れ換えるという事である。
>またσa=σbはa≡b modnと同値なので、(ℤ/nℤ)^×からGへの写像[a]n→σaは全単射であり、群の積も対応している。
最初に、p.31より、
「集合{0,1,・・・,n-1}にこの加法,乗法を合わせて考えたものをℤ/nℤと表します。整数aをnで割った余りを
[a]n や a modn
で表し、ℤ/nℤの元とみなします。[a]nは表記を簡潔にするために本書で用いる記号です。」
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
また、p.33より、
「nと互いに素な正整数(≦n)をℤ/nℤの元を用いて、次のように表します。
(ℤ/nℤ)^×={[a];aはnと互いに素}
={[a];aは1,2,・・・,n-1のどれかで、nと互いに素}
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
ところで、σa=σbは、(上より)「σa:ζ→ζ^a」なので、ζ^a=ζ^b
また、ζは1の原始n乗根なので周期nの周期関数(ζ^n=1)である。よって、a≡b modnと同値という事である。
a≡b modnとζ^a=ζ^bが同値なので、
「(ℤ/nℤ)^×からGへの写像[a]n→σaは全単射」は分かる。
(a≡b modnとℤ/nℤと[a]nは同じ意味で、「σa:ζ→ζ^a」からζ^aとσaとGは同じような事と考えれば良い。Gはσaの集合。前回は、G={σ₁,σ₂,σ₃,σ₄}の例を挙げた。)
問題は、「群の積も対応している」である。
「(ℤ/nℤ)^×からGへの写像[a]n→σa」を写像Fとする。
つまり、F:(ℤ/nℤ)^×→G([a]n→σa)と定義すると、
F([a]n+[b]n)=σ(a+b)=ζ^(a+b)
=ζ^aζ^b=σaσb=F([a]n)F([b]n)
∴F([a]n+[b]n)=F([a]n)F([b]n)
よって、写像Fは準同型写像である。また、Fは全単射であったので同型写像である。
∴(ℤ/nℤ)^×≅G
「したがって[a]nをσaに対応させることにより、(ℤ/nℤ)^×はGと同型である」という事である。
定義6.1
演算◦を持つ群(G,◦)と演算*を持つ群G'(G',*)に対して、GからG'への写像f:G→G'が
∀a,b∈G,f(a◦b)=f(a)*f(b)
なる条件を満足しているとき、fをGからG'への準同型写像という。また、単射でかつ全射である準同型写像を同型写像という。群Gから群G'への同型写像fが存在するとき、GとG'は同型であるといい、G≃G'と書く。
「群・環・体 入門」新妻弘・木村哲三著より
念のため、私のは適当である。何故なら、今までこの本には準同型写像なんて概念は出て来ていないからである。
多分、群の積とはσaσb=σabの事だろう。これが(ℤ/nℤ)^×とGの同型にどう役に立つのかよく分からない。写像Fでσaσb=σabも全単射になるという事だけだろうか。
おまけ: