解説
>仮定よりαはf(x)の原始元
仮定は、「f(x)の1つの根α=α₁の式によって、f(x)の他のすべての根α₂,・・・,αnが表されている」という事で、原始元の定義は、
定義8.1(原始元)
重根を持たないn次多項式f(x)の原始元βとは、次の(1),(2)をみたす複素数のことである。以下においてα₁,・・・,αnをf(x)の根とする。
(1)βはα₁,・・・,αnの式で表される。
(2)α₁,・・・,αnはそれぞれβの式で表される。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
で、αはα=α₁よりf(x)の根で表されているので(1)を満たす。
また、「f(x)の他のすべての根α₂,・・・,αnがαの式によって表されている」ので、(2)も満たしている。(α₁=αよりf(x)の根全てがαによって表されているから。)
よって、αはf(x)の原始元であるという事。
>αはf(x)の原始元なので、定理9.1(1)の証明より、αをα₁に入れ換えるのは式の形によりません。
p.153に「βの入れ換えは式の形によらない」とあり、また、p.151に「βは原始元」とあるので、「原始元の入れ換えは式の形によらず一定」という事。(次の項でどういう事か具体的に分かる。)
>よって、h(α)=h(α,g(α))=0においてαをαiに入れ換えると、
h(αi,g(αi))=0
h(x)がどんな式でも、例えばh(α)=0だったとすると、(原始元の最小多項式の他の根)αiに入れ換えてもh(αi)=0で同じ(一定)になるという事。念のため、別に0である必要はない。
>よって、h(α)=h(α,g(α))=0においてαをαiに入れ換えると、
h(αi,g(αi))=0 ∴g(αi)=g(α)(仮定)よりh(αi,g(α))=0
h(α,g(α))=h(αi,g(αi))より、
g(αi)=g(α)
これに、i=2,・・・,nを代入すると、
g(a₂)=g(α),g(a₃)=g(α),・・・,g(an)=g(α)
よって、仮定の「αの式g(α)の値がg(α₂),g(α₃),・・・,g(αn)の値とすべて等しいならば」という事である。
また、h(αi,g(αi))にg(αi)=g(α)を代入すると、h(αi,g(α))=0
>h(αi,g(α))=0
つまりh(x)はα₁,・・・,αnをすべて根に持ちます。ゆえにdegh(x)≧degf(x)なのでdegh(x)=degf(x)です。
h(αi,g(α))=0は、h(αi)=0という意味で、このiをi=1,…,nにすると、「h(x)はα₁,・・・,αnをすべて根に持つ」という事。
よって、h(x)は少なくともn個(仮定より重根がないので全て相異なる根だから)の根を持つので、degh(x)≧n
また、degf(x)=nより、
degh(x)≧degf(x)———➀
ところで、h(x)はαのL最小多項式で、f(x)はαのK最小多項式より、補題9.4により、degh(x)<degf(x)———②
➀,②より、degh(x)=degf(x)
>したがって補題9.4よりLは定数からなり、とくにg(α)は定数です。
補題9.4により、degh(x)=degf(x)よりK=Lで、またK⊂Lなので、Lは定数のみである。
(例えば、ℚ⊂ℚ[√2]でℚ=ℚ[√2]だったらℚ[√2]は定数のみである。xの式にx=α=√2を代入するイメージ。)
補題9.4(定数の一意性)
f(x)を、体Kを係数とする既約多項式とする。またαをf(x)の1つの根とし、体LはKを含み、αの式全体に含まれるとする:K⊂L⊂(αのK係数の式全体)。g(x)をαのL最小多項式とする。もしK≠Lならば、degg(x)<degf(x)である。言い換えると、degf(x)=degg(x)ならばL=Kである。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
おまけ: