解説
>次にU∩Vからf^-1(0)への写像Fを、x→F(x)=(x,x)と定める。
示したい事は、「f^-1(0)はU∩Vと同型であること」なので、
橋渡しの写像F:U∩V→f^-1(0)を考える訳である。そして、具体的には、上より、
x→F(x)=(x,x)である。
>このとき、x∈KerFとすれば、F(x)=(x,x)=(0,0)となり、KerF=0となる。
ここでは、Fが単射という事を示したのである。どういう事かというと、次の命題(2)からである。
命題
線型写像F:V→V'において、次の(1),(2)が成り立つ。
(1)x,y∈Vに対し、F(x)=F(y)⇔x-y∈F^-1(0)
(2)Fが1対1である⇔F^-1(0')=0
「よくわかる線型代数」有馬哲・石村貞夫著p.120より
命題と定義
線型写像F:V→V'に対し、
(ⅰ)V'の零元0'のFによる逆像
F^-1(0')={a∈V|F(a)=0'}
はVの部分空間である。これをFの核(kernel)といい、KerFとも表す。
(ⅱ)は省略。
「よくわかる線型代数」有馬哲・石村貞夫著p.110より
>またf^-1(0)の任意の元を(x,y),x∈U,y∈Vとすれば、x=yより、x∈U∩V
ここでは、Fが全射という事を示した訳である。それさえ分かれば内容は読めば分かるだろう。
>したがって、Fは1対1で上への写像となるので、f^-1(0)≅U∩V
Fが線形写像かつ全単射ならばFは同型写像という事である。(下の(1)より)
命題と定義
U,Vを線型空間,F:U→Vを線型写像とする。このとき、Fについて次の3条件はどの二つもたがいに同値である。
(1)FはVの上への1対1の写像である。
(2)Fは逆写像F^-1:V→Uをもつ。
(3)ある線型写像G:V→Uがあって、G◦F=I_U,F◦G=I_V
これらのどれか一つの条件をみたすとき、Fは同型写像であるという。UはVと同型であるといい、U≅Vで表す。
「よくわかる線型代数」有馬哲・石村貞夫著p.118より
つまり、厳密には、Fが線形写像である事を示した方が良い。
「U∩Vからf^-1(0)への写像Fを、x→F(x)=(x,x)と定める」より、
x₁,x₂∈U∩V,F(x₁+x₂)=(x₁+x₂,x₁+x₂)=(x₁,x₁)+(x₂,x₂)=F(x₁)+F(x₂)
∴F(x₁+x₂)=F(x₁)+F(x₂)———①
また、F(ax₁)=(ax₁,ax₁)=a(x₁,x₁)
=aF(x₁)
∴F(ax₁)=aF(x₁)———②
①,②より、写像Fは線型性(和とスカラー倍)を保っているので線型写像である。
定義
V,V'を線型空間とする。写像F:V→V'が二つの条件
(ⅰ)任意のa,b∈Vに対し、
F(a+b)=F(a)+F(b)
(ⅱ)任意のa∈V,任意のc∈Rに対し、
F(ca)=cF(a)
をみたすとき、Fを線型写像,一次写像などという。
「よくわかる線型代数」有馬哲・石村貞夫著p.108より
また、U∩Vが線形空間である事は、次の問題から。
問題5
Vを線型空間,W₁,W₂⊆Vを部分空間とする。このとき
(1)W₁∩W₂もまたVの部分空間であることを示せ。
(2)は省略。
「よくわかる線型代数」有馬哲・石村貞夫著p.104より
また、f^-1(0)が線形空間である事は、上より、
命題と定義
線型写像F:V→V'に対し、
(ⅰ)V'の零元0'のFによる逆像
F^-1(0')={a∈V|F(a)=0'}
はVの部分空間である。これをFの核(kernel)といい、KerFとも表す。
(ⅱ)は省略。
「よくわかる線型代数」有馬哲・石村貞夫著p.110より
で、Vが線型空間だから。
おまけ: