「蛇足」の間違い
蛇足
示したい事は、
(I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In)+Ii=R———①
また、条件よりどの2つも互いに素よりIi+Ij=Rなので、In+Ii=R———②と出来る。
①,②より、
(I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In)=In
∴I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In-₁=1
この両辺にIiをかけると、
IiI₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In-₁=Ii
ところで、Rは可換よりイデアルも可換である(定理2.5(3))。
∴I₁I₂・・・In-₁=Ii———③
③を②に代入すると、
I₁I₂・・・In-₁+In=R
よって、「Rは可換環であるから、(I₁・・・In-₁)+In=Rを示せば十分である」という事である。
>①,②より、
(I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In)=In
ここですね。これが出来るのは、
(I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In)∩Ii=φかつ
In∩Ii=φの時だけですね。
>(I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In)=In
∴I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In-₁=1
ここもダメだと思いますが、私は専門家ではないのでスルーします。
演習問題16
可換環Rの真のイデアルI₁,・・・,In(n≧2)が2つずつ互いに素であるとする。すなわち、i≠jのときIi+Ij=Rである(§2演習問題12参照)。このとき、次が成り立つことを示せ(中国式剰余の定理)。
(1)(I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In)+Ii=R(i=1,・・・,n)
(2),(3)は省略。
別解
(1)数学的帰納法で示す。
(ⅰ)n=2の時、I₁+I₂=R または I₂+I₁=Rで成り立つ。(i=1または2だから。)
(ⅱ)n-1まで成り立つと仮定すると、
(I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In-₁)+Ii=R
また、どの2つも互いに素より、In+Ii=R
よって、an+ai=1(∃an∈In,∃ai∈Ii),a1a2・・・ai-₁ai+₁・・・an-₁+ai=1(∃a₁∈I₁,・・・,∃an-₁∈In-₁)
この2式を掛け合わせると、
(an+ai)(a1a2・・・ai-₁ai+₁・・・an-₁+ai)=1
∴a₁a₂・・・ai-₁ai+₁・・・an-₁an+(anai+aia₁a₂・・・ai-₁ai+₁・・・an-₁+aiai)=1
ところで、
a₁a₂・・・ai-₁ai+₁・・・an-₁an∈I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In
anai+aia₁a₂・・・ai-₁ai+₁・・・an-₁+aiai∈Ii(全ての項にaiがかかっていて、ai∈IiでIiはイデアルだから。)
∴1∈(I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In)+Ii
ところで、右辺はイデアル(定理2.5より)でイデアルが単位元1を含んでいるので、
(I₁I₂・・・Ii-₁Ii+₁・・・In)+Ii=R(定理2.2より)
よって、nの時も成り立つ。
(ⅰ),(ⅱ)より、数学的帰納法により示された。
定理2.5
I₁,I₂を可換環Rのイデアルとすると、次の(1),(2),(3)それぞれにおける集合もイデアルである。
(1)I₁+I₂={x|x=a₁+a₂,a₁∈I₁,a₂∈I₂}
(2)I₁∩I₂
(3)I₁I₂={a₁b₁+・・・+anbn|n∈ℕ,a₁,・・・,an∈I₁,b₁,・・・,bn∈I₂}
すなわち、I₁I₂はI₁の元aiとI₂の元biの積aibiの有限個の和の全体の集合である。
定理2.2
可換環RのイデアルIが単位元1を含めばI=Rとなる。したがって、環RのイデアルIが可逆元を含めばI=Rとなる。
「演習 群・環・体 入門」新妻弘著より
しかし、よく考えたら、定理2.5の(3)が3個以上でも成り立つ保証がありませんでしたね。だから、別解は保留。(まぁ、定理2.5(3)の証明を見れば成り立ちそうですが。)
おまけ: