解説
>もしσ∈A5ならば、問題 5-11よりN⊃A5である。
A5は◎ 定義(対称群,交代群)より、5個の数字を偶数回入れ換える変換を元とした集合(群になる)である。
◎ 定義(対称群,交代群)
1,・・・,nの入れ換えのなす群をn次対称群といい、Snと表す。ちょうど2個だけ交換する入れ換えを偶数個合成した入れ換えのなす集合は、Snの部分群である。この部分群をn次交代群といい、Anと表す。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
よって、σは偶置換(偶数回置換をする)の元であるから、それを含む正規部分群NはA5を含むという事だろう。しかし、問題 5-11とどう関係しているのだろう。
問題 5-11
A5の正規部分群は自明なもの({e}とA5)しかないことを示せ。
これはA5の正規部分群でS5の正規部分群という事ではない。A5がS5の正規部分群である事は次の項である。
>(S5:A5)=2だから、N=S5,A5である。
◎ 定義(対称群,交代群)より、A5はS5の部分群である。よって、A5でS5を類別すると、
S5=A5∪σA5(σ∈S5)(偶置換と奇置換の2つだから。A5∩σA5=φ)
∴(S5:A5)=2 よって、群S5の部分群A5の指数が2より、問題 5-2aにより、A5は正規部分群である。
問題5-2a
群Gの部分群Hの指数が2に等しいとき、HはGの正規部分群であることを示せ。
また、S5は自明な正規部分群であるので、
N=S5,A5である。
定義5.1(正規部分群)
群Gの部分群Nが次の条件をみたすとき、NをGの正規部分群という:
「Gの各元gに対して、Ng=gNをみたす。」
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
このNをGにすれば、g∈Gより、Gg=gGが成り立つ事は、定理4.1の系より自明。
よって、S5は自明な正規部分群である。
定理4.1の系
Gを群,HをGの部分群とする。このとき、Gの任意の元aについて次の(1),(2),(3)は同値である。
(1)a∈H(2)aH=H(3)Ha=H
「群・環・体 入門」新妻弘・木村哲三著より
>σ'σ∈NはA5に入り(A5に入らないものを読み替えてもA5に入らず、A5に入らないものどうしの積はA5に入るから)、
まず、「A5に入らないものを読み替えてもA5に入らず」とは、A5は偶置換の集合でこの「読み替え」は、「いまaをbに、bをc(c≠a)に読み替える変換」から2回の変換である。
つまり、偶置換に2回加えても偶置換なので、A5の元にこの「読み替え」をするとA5に入り、奇置換に2回加えても奇置換なので、「A5に入らないものを読み替えてもA5に入らず」という事である。
次に、「A5に入らないものどうしの積はA5に入る」とは、奇置換に奇置換を施せば偶置換になるという事である。
>いまaをbに、bをc(c≠a)に読み替える変換をσに施したものをσ'と表す。
σ'σ∈NはA5に入り、σ'σ(a)=c≠aだからσ'σ≠eである。
上より、「σ(a)=b(a≠b)をみたすa,bをとる。いまaをbに、bをc(c≠a)に読み替える変換(τστ^-1に変える)をσに施したものをσ'と表す。」とあるので、
σ'σ(a)=σ'(σ(a))=σ'(b)=c≠a
よって、σ'σ(a)≠aより、σ'σは恒等置換ではない。∴σ'σ≠e
>よってNはA5を含む。σはA5に入らないので、このNはS5である。
上より「σ'σ∈NはA5に入」るので、(σを含む)正規部分群NはA5を含む。(Nが偶置換の元を持つから。)また、上より「次にσ∉A5と」しているので、奇置換も含む群である。
よって、「このNはS5である」。(A5とS5の間に部分群がない事は暗黙の了解なのだろう。偶置換と奇置換だから自明か。)
うっかりしたが、σ'σ≠eを示したのは、N={e}の可能性がない事を示した訳である。
>全体的に解説した後に、σ'σ∈Nを厳密に解説して下さい。
これと「いまaをbに、bをc(c≠a)に読み替える変換(τστ^-1に変える)をσに施したものをσ'と表す。」の補足解説は次回。
おまけ: