解説の続き
問題 3-10c
体Kを係数とするx,yの多項式f(x,y)は、定数でない2式の積で表せないとき、既約であるという。次の主張(*)について、以下の問いに答えよ。
「f(x,y)はg(x,y)h(x,y)を割り切るとき、
g(x,y)またはh(x,y)を割り切る」・・・(*)
(1)f(x,y)は既約であり、かつ、yのみの式であるとき、(*)を示せ。
(2)f(x,y)が既約であるとき(*)が成り立つことを示せ。したがって本文と同様に、x,yの式は既約多項式の積に、定数倍と積の順序を除いて一意的に表される。
解答
(2)f(x,y)はxも含む式と仮定する(そうでない場合は(1)で済んでいる)。
x,yの多項式をyの分数式を係数とするxの式とみる。このとき1変数の結果からf(x,y)は(yの分数式を係数とする多項式として)g(x,y)またはh(x,y)を割り切る。f(x,y)がg(x,y)を割り切るとすると、g(x,y)=f(x,y)k(x,y)である(k(x,y)はyの分数式を係数とする)。そこでk(x,y)の分母を払ってc(y)g(x,y)=f(x,y)k'(x,y)(c(y)はyの多項式,k'(x,y)は多項式)と表される。c(y)の各既約因子d(y)に(1)を適用すると、d(y)はk'(x,y)を割り切る(∵f(x,y)はxも含む既約式なのでd(y)で割り切れないから)。c(y)のすべての既約因子に同様の議論をすると、c(y)はk'(x,y)を割り切る。よってf(x,y)はg(x,y)を割り切ることがわかる。f(x,y)がh(x,y)を割り切る場合も同様である。以上により(*)が証明された。
「本質を学ぶ ガロワ理論 最短コース」梶原健著より
解説2
>このとき1変数の結果からf(x,y)は(yの分数式を係数とする多項式として)g(x,y)またはh(x,y)を割り切る。
yの分数式を体Kの代わりに見るという事だろう。続きでこれを証明するという訳である。
>f(x,y)がg(x,y)を割り切るとすると、g(x,y)=f(x,y)k(x,y)である(k(x,y)はyの分数式を係数とする)。そこでk(x,y)の分母を払ってc(y)g(x,y)=f(x,y)k'(x,y)(c(y)はyの多項式,k'(x,y)は多項式)と表される。c(y)の各既約因子d(y)に(1)を適用すると、d(y)はk'(x,y)を割り切る(∵f(x,y)はxも含む既約式なのでd(y)で割り切れないから)。c(y)のすべての既約因子に同様の議論をすると、c(y)はk'(x,y)を割り切る。よってf(x,y)はg(x,y)を割り切ることがわかる。
>f(x,y)がg(x,y)を割り切るとすると、g(x,y)=f(x,y)k(x,y)である(k(x,y)はyの分数式を係数とする)。
f(x,y)は「yの分数式を係数とするxの式」でg(x,y)は普通の整式で「k(x,y)はyの分数式を係数とする」訳である。
>そこでk(x,y)の分母を払ってc(y)g(x,y)=f(x,y)k'(x,y)(c(y)はyの多項式,k'(x,y)は多項式)と表される。
よって、k(x,y)=k'(x,y)/c(y)と表される。(k'(x,y)の係数は分数式ではないyの式)
よって、先の等式g(x,y)=f(x,y)k(x,y)に代入して分母を払うと、
c(y)g(x,y)=f(x,y)k'(x,y)となる。
>c(y)の各既約因子d(y)に(1)を適用すると、d(y)はk'(x,y)を割り切る(∵f(x,y)はxも含む既約式なのでd(y)で割り切れないから)。
c(y)を既約多項式の積と考えて、その既約多項式d(y)など1つずつで(1)を適用すると、
c(y)g(x,y)=f(x,y)k'(x,y)より、
g(x,y)=f(x,y)k'(x,y)/c(y)で左辺が整式だから右辺も整式でd(y)はf(x,y)k'(x,y)を割り切る。そして、f(x,y)は条件から既約多項式なので、k'(x,y)側がd(y)で割り切れるという事である。
>c(y)のすべての既約因子に同様の議論をすると、c(y)はk'(x,y)を割り切る。よってf(x,y)はg(x,y)を割り切ることがわかる。
上のg(x,y)=f(x,y)k'(x,y)/c(y)のk'(x,y)がc(y)で割り切れる訳である。
よって、g(x,y)=f(x,y)q(x,y)となり、f(x,y)はg(x,y)を割り切ることがわかるという訳である。
ところで、「よって、k(x,y)=k'(x,y)/c(y)と表される。(k'(x,y)の係数は分数式ではないyの式)」から、q(x,y)=k(x,y)である。
つまり、g(x,y)=f(x,y)k(x,y)
初めの仮定が「f(x,y)がg(x,y)を割り切るとすると、g(x,y)=f(x,y)k(x,y)である(k(x,y)はyの分数式を係数とする)」で、結論が「よってf(x,y)はg(x,y)を割り切ることがわかる」は当たり前の事で証明になっていないのではないだろうか。
おまけ: