解説
>a,b∈Gについて、
a~b⇔a=bまたはb=a^-1
によってGにおける関係を定義する。
問3.8より、aとa^-1の位数は同じである。つまり、位数が同じ同値類でGを類別するためにこの同値関係を定義するのである。
問3.8
群Gの元をaとするとき、|a^-1|=|a|であることを示せ。
「群・環・体 入門」新妻弘・木村哲三著より
念のため、類別が分からない人のために。例えば、3で割り切れる数の集合と3で割って1余る数の集合と3で割って2余る集合は互いに重なりを持たずに全体集合のℤを分類する。こういうのを同値類による類別という。
>反射律a~a:これはa=aより成り立つ。
対称律a~b⇒b~a:仮定a~bよりa=bまたはb=a^-1 したがって、b=aまたはa=b^-1 ゆえに、b~aである。
推移律a~b,b~c⇒a~c:
(a=bまたはb=a^-1),(b=cまたはc=b^-1)⇒(a=cまたはc=a^-1)
を示せばよい。4つの場合に分けて調べる。
(ⅰ)a=b,b=cのとき、a=c
(ⅱ)a=b,c=b^-1のとき、c=b^-1=a^-1
(ⅲ)b=a^-1,b=cのとき、c=b=a^-1
(ⅳ)b=a^-1,c=b^-1のとき、c=b^-1=a
以上によって推移律が示された。
この部分は、定義したa~b⇔a=bまたはb=a^-1が、同値関係である事の証明で、読めば解読出来るので省略。
>aの同値類はCa={a,a^-1}であり、特にa=eのときにはCe={e}となっている。|a|=2のとき、a^2=eだから、a=a^-1 ゆえに、このときCa={a}
上の同値関係を定義する事によって、同値類Ca={a,a^-1}が定義され、位数が同じものの同値類である。位数が1の場合は、Ca={a,a^-1}のaをeとすると、Ce={e,e^-1=e}より、Ce={e}
また、位数が2の場合は、位数の定義よりa^2=e この両辺にa^-1をかけると、a=a^-1
よって、Ca={a,a^-1}はCa={a}となる。
>したがって、
|a|≦2⇔|Ca|=1,|a|≧3⇔|Ca|=2
位数が1または2の場合は、Ce={e},Ca={a}だったので、|Ca|=1である。
また、位数が3以上の場合は、普通にCa={a,a^-1}なので、|Ca|=2である。
>Xをこの同値関係の完全代表系とすると
G=⋃(a∈G)Ca=⋃(a∈X)Ca
と表される。
要は、Gが位数の種類で類別されると言っているだけである。因みに、完全代表系とは、3で割り切れる数の集合だったら0,3で割って1余る数の集合だったら1,3で割って2余る数の集合だったら2というような話である。(他の数でも良い。例えば、3で割り切れる数の集合だったら3や6でも良いという事。)
>ここで、Xの中の位数2の元の集合をX1,Xの中の位数3以上の元の集合をX2とする。すなわち、X={e}∪X1∪X2 このとき、
|G|=1+∑(a∈X1)|Ca|+∑(a∈X2)|Ca|=1+|X1|+2|X2|
完全代表系の集合をX={e}∪X1∪X2で類別する(位数の種類の集合Xを位数1の元の集合{e}と位数2の元の集合X1と位数3以上の元の集合X2で類別するという事)。
このとき、Gも{e}∪X1∪X2で類別され、Gの元の個数は、
|G|=1+∑(a∈X1)|Ca|+∑(a∈X2)|Ca|で表される。
ここで、「位数が1または2の場合は、|Ca|=1で、位数が3以上の場合は、|Ca|=2」だったので、
|G|=1+|X1|+2|X2|となる。
>ゆえに、2n=1+|X1|+2|X2|という式が得られるので、|X1|≠0 ゆえに、X1≠φである。すなわち、位数が2の元が存在する。
Gは位数2nの群なので、|G|=2n よって、左辺は偶数で右辺は1+2|X2|が奇数なので、|X1|=0では矛盾が起こる。よって、X1≠φでX1は位数が2の元の集合だったので、位数が2の元が少なくとも1つは存在するという事である。
おまけ: