解説
>(2)ab=baとすると、(1)よりab^n=b^na すると、再び(1)を用いてa^mb^n=b^na^mが得られる。
(1)よりab^n=b^na ∴b^na=ab^n
これに再び(1)を用いると、b^na^m=a^mb^n
∴a^mb^n=b^na^m
問2.5
群Gの元をa,bとする。このとき、任意の整数nについて次のことを証明せよ。
(1)ab=ba⇒ab^n=b^na
(2)ab=ba⇒a^mb^n=b^na^m
別解
(1)(ⅰ)n=0の場合、
ab^0=ae=a=ea=b^0aで成り立つ。
(ⅱ)n>0の場合、
ab^n=abbb・・・b(bはn個)
ここで、ab=baより、
=babb・・・b
これを繰り返すと、
=bbbb・・・a=b^na
∴ab^n=b^na
厳密には、定理2.4(一般結合法則)を使う。
定理2.4(一般結合法則)
a1,a2,・・・,an(n≧3)をGの元とするとき、1≦r<nについて、
(a1…ar)(ar+1・・・an)=a1・・・an
が成り立つ。
特に、1≦r<s<nのとき、次が成り立つ。
(a1・・・ar)(ar+1・・・as)(as+1・・・an)=a1・・・an
(ⅲ)n<0の場合、n=-n'(n'>0)と置く。
ここで、ab=baの両辺に左右からb^-1をかけると、
b^-1ae=eab^-1 ∴ab^-1=b^-1a
よって、
ab^n=ab^-n'
=a(b^-1)^n'(指数の定義)
=(b^-1)^n'a(ab^-1=b^-1aだから、(ⅰ)の結果より)
=b^-n'a=b^na
∴ab^n=b^na
(ⅰ)~(ⅲ)より、任意のnに対して、
ab=ba⇒ab^n=b^naが成り立つ。
(2)(ⅰ)m=nの場合、ab=baの両辺をm乗すると、(ab)^m=(ba)^m
定理2.7より、a^mb^m=b^ma^m
このbの指数に、m=nを代入すると、
a^mb^n=b^na^m
定理2.7
Gが可換群のとき、Gの任意の元a,bについて次のことが成立する。
(a・b)^n=a^n・b^n
「群・環・体 入門」新妻弘・木村哲三著より
(ⅱ)m>nの場合、
a^mb^n=a^(m-n)a^nb^n=a^(m-n)(ab)^n(定理2.7より)
また、
b^na^m=b^na^na^(m-n)=(ba)^na^(m-n)(定理2.7より)
ここで、ab=ba=x,a^(m-n)=yと置くと、
a^mb^n=a^(m-n)(ab)^n=yx^n
b^na^m=(ba)^na^(m-n)=x^ny
ところで、xy=ba・a^(m-n)=ba^(m-n+1)
yx=a^(m-n)・ab=a^(m-n+1)b
今、ba=abとして(1)の結果を使うと、
ba^(m-n+1)=a^(m-n+1)bが成り立つ。
∴xy=yx
よって、yx=xyとして再び(1)の結果を使うと、
yx^n=xy^n
∴a^mb^n=b^na^m
(ⅲ)m<nの場合も同様。
(ⅰ)~(ⅲ)より、任意のnに対して、
ab=ba⇒a^mb^n=b^na^mが成り立つ。
注:(1)の結果はnが任意の整数なので(ⅰ)~(ⅲ)に分けなくても良かった。
おまけ: