次の文章を完全解説して下さい。
定理3.7(メビュースの反転公式)
F(n),f(d)を整数の集合ℤからℤへの関数とする。このとき、F(n)=∑(d|n)f(d)が成り立てばf(n)=∑(d|n){μ(d)F(n/d)}が成り立つ。ただし、和はnのすべての約数dについての和を表すものとする。
証明
dがnのすべての正の約数を動けば、n/dもnのすべての約数を動くから
f(n)=∑(d|n){μ(n/d)F(d)}
を示せば十分である。
n/d=d'とおけば
F(n)=∑(d|n)f(d)=∑(n=dd')f(d)
と表される。ここで、∑(n=dd')はn=dd'を満足するすべての正の整数dについて加えることを意味している。
∑(d|n){μ(d)F(n/d)}=∑(d|n){μ(n/d)F(d)}
=∑(n=cd){μ(c)F(d)}
ここで、F(d)=∑(d=ab)f(a)であるから
∑(d|n){μ(d)F(n/d)}=∑(n=cd)μ(c)∑(d=ab)f(a)
=∑(n=cd)∑(d=ab)f(a)μ(c)
=∑(n=abc)f(a)μ(c)
=∑(a|n)f(a){∑(n/a=bc)μ(c)}
=f(n)
上の式の最後のところは、n/a>1のとき∑(n/a=bc)μ(c)=0,n/a=1のとき∑(bc=1)μ(c)=μ(1)=1(定理3.6)より得られる。
解説
>dがnのすべての正の約数を動けば、n/dもnのすべての約数を動く
例えば、n=8とすると、nの約数dはd={1,2,4,8}でn/d={8,4,2,1}で一致するので、分かるだろう。
>f(n)=∑(d|n){μ(n/d)F(d)}
を示せば十分である。
メビュースの反転公式の「f(n)=∑(d|n){μ(d)F(n/d)}が成り立つ」事を示すのに、dとn/dを入れ換えた「f(n)=∑(d|n){μ(n/d)F(d)}を示せば十分である」という事である。
>n/d=d'とおけば
F(n)=∑(d|n)f(d)=∑(n=dd')f(d)
と表される。
∑(d|n)f(d)ではnの約数全てのdにおいて総和を取るという事を、∑(n=dd')f(d)と表し方を変えるという事を予告しただけである。念のため、∑(n=dd')もnの約数全てのdについて総和を取るという事である。
>∑(d|n){μ(d)F(n/d)}=∑(d|n){μ(n/d)F(d)}
=∑(n=cd){μ(c)F(d)}
この初めの式は、メビュースの反転公式の「∑(d|n){μ(d)F(n/d)}が成り立つ」という結果の式である。そして、次の式で先ほどのdとn/dが同じ集合なので入れ換えるという事である。
最後は、上の「n/d=d'とおけばF(n)=∑(d|n)f(d)=∑(n=dd')f(d)と表される」のd'を実戦的にcにしたという事である。つまり、n/d=cと置く。そして、代入しただけである。
>ここで、F(d)=∑(d=ab)f(a)であるから
ここで、メビュースの反転公式の条件の「F(n)=∑(d|n)f(d)が成り立てば」のnをdとして(元の)dをaとすると、この式が出来上がる。また、d/a=bである。
因みに、∑(d=ab)f(a)は∑(a|d)f(a)と同じ事である。
>∑(d|n){μ(d)F(n/d)}=∑(n=cd)μ(c)∑(d=ab)f(a)
=∑(n=cd)∑(d=ab)f(a)μ(c)
=∑(n=abc)f(a)μ(c)
=∑(a|n)f(a){∑(n/a=bc)μ(c)}
=f(n)
その上の式の両端から、
∑(d|n){μ(d)F(n/d)}=∑(n=cd){μ(c)F(d)}
このF(d)にすぐ上にF(d)=∑(d=ab)f(a)を代入すると、1行目が成り立つ。次の
=∑(n=cd)∑(d=ab)f(a)μ(c)は自明だろう。次の
=∑(n=abc)f(a)μ(c)も同様。さらに次の
=∑(a|n)f(a){∑(n/a=bc)μ(c)}もこう出来ると信じると、
=f(n)(下に解説が続く。)
>上の式の最後のところは、n/a>1のとき∑(n/a=bc)μ(c)=0,n/a=1のとき∑(bc=1)μ(c)=μ(1)=1(定理3.6)より得られる。
定理3.6
nを自然数とするとき、つぎの式が成り立つ。
∑(d|n)μ(d)=1(n=1)
=0(n>1)
最後の式の後半∑(n/a=bc)μ(c)でn/a>1の場合は定理3.6より=0で、n/a=1の時=1である。つまり、
∑(n/a=bc)μ(c)=0+0+・・・+1
また、前半の∑(a|n)f(a)=f(a1)+f(a2)+・・・+f(n)である。(aはnの約数という扱いとなるから。)
よって、∑(a|n)f(a){∑(n/a=bc)μ(c)}={f(a1)+f(a2)+・・・+f(n)}(0+0+・・・+1)=f(a1)+f(a2)+・・・+f(n)となって、=f(n)とならないというのが私の主張である。
まず、上から「因みに、∑(d=ab)f(a)は∑(a|d)f(a)と同じ事である」とあり、aはdの約数扱いではないのだろうか。
ただし、
>∑(d|n){μ(d)F(n/d)}=∑(n=cd)μ(c)∑(d=ab)f(a)
=∑(n=cd)∑(d=ab)f(a)μ(c)
=∑(n=abc)f(a)μ(c)
=∑(a|n)f(a){∑(n/a=bc)μ(c)}
=f(n)
この2行目の段階で、∑(d=ab)∑(n=cd)f(a)μ(c)
=∑(a|d)∑(c|n)f(a)μ(c)だが、3行目の段階から、
∑(n=abc)f(a)μ(c)=∑(a|n)∑(c|n)f(a)μ(c)と出来れば、
=f(a1)・0+f(a2)・0+・・・+f(n)・1
=f(n)
と出来ると思うのだが、これはこじつけだと思う。
そもそも、初めの、
「∑(d|n){μ(d)F(n/d)}=∑(d|n){μ(n/d)F(d)}
=∑(n=cd){μ(c)F(d)}」
この段階ではdが前半と後半に連動しているのに、次の
「ここで、F(d)=∑(d=ab)f(a)であるから
∑(d|n){μ(d)F(n/d)}=∑(n=cd)μ(c)∑(d=ab)f(a)」
この∑(n=cd)μ(c)∑(d=ab)f(a)の式では前半と後半は連動させているのだろうか。(前半はd(c)で後半はa)
もっとも次の次の式では=∑(n=abc)f(a)μ(c)となっていて問題なさそうにはなっているのだが。
とにかく、他に分かり易い証明があるので、この証明は避けた方が良いのではないでしょうか。私の勘違いだったらすみません。
おまけ: