解説
>実際、A/Bの中のxを含む同値類はB+xと表される
上の定理4に(正規部分群による商群の場合と同じ)とあるので、前章の定理4を見ると、
定理4
(H,△)が(G,△)の正規部分群であれば、同値類系G/Hに導入される演算△について、代数系(G/H,△)は群になる。これを商群という。
<例> H=(3)={0,±3,±6,±9,…}とおくと、群(H,+)は群(ℤ,+)の部分群(ℤは可換だから、正規部分群)になり、同値類系
ℤ/H={H,H+1,H+2}が決まる。
つまり、「A/Bの中のxを含む同値類はB+xと表される」事が分かるだろう。念のため、x∈Aである。(ℤ/H={H,H+1,H+2}はHが3の倍数の集合なので、3で割って0,1,2余る数の集合である。)
>(B+x)✚(B+y)=x+yを含む同値類=B+x+y
(B+x)✖(B+y)=x×yを含む同値類=B+x×y
例えば、Bを3の倍数の集合と考えると、
(B+x)✚(B+y)=B+B+x+y=B+x+y
は自明だろう。
また、(B+x)✖(B+y)=B×B+B×y+x×B+x×y=B+B+B+x×y=B+x×y
もBを3の倍数と考えれば当然の話である。(もうちょっと上級者には、Bはイデアルだからp.123の(3B)の性質を考えれば自明と言える(展開したと後に)。)
(3B)
x∈Bならば、任意のy∈Aに対してx×y∈B
>注意 同値類の和に各同値類の”代表”x,yを利用しているが、結果は(両立性のおかげで)x,yの選び方によらず、同値類を決めれば決まるのであった。
同値類の和とあるので、
(B+x)✚(B+y)=x+yを含む同値類=B+x+y
例えば、Bを3の倍数の集合と考えると、B+xとは3の倍数か3で割って1余る数の集合か3で割って2余る数の集合のどれかである。
ここで、B+xを3で割って1余る数の集合としよう。すると、x=1である。ただし、x=4や7,…でも良い。それが「x,yの選び方によらない」という意味である。
「両立性のおかげで」とは、
(B+x)✚(B+y)=B+x+yという式に変形できるからという意味である。結局、x+yをさらに3で割った余りを「代表」にすれば同値類は変わらないという意味である。
ついでに、これも解説しよう。
>注意 同値類に分けることを、”類別する”という。
p.38の「(B)同値類と同値類系」を見て欲しい。
<例>
整数全体ℤを「3を法とする合同関係」で同値(合同)な数同士をまとめると、次の3つの部分集合に分けられる:
C={…,-6,-3,0,3,6,9,…}
D={…,-5,-2,1,4,7,10,…}
E={…,-4,-1,2,5,8,11,…}
これらの部分集合を、同値関係(この例では3を法とする合同関係)による同値類という。この場合、
C={3k|k∈ℤ}
D={3k+1|k∈ℤ}
E={3k+2|k∈ℤ}
とも表せるので、各同値類は「3で割った余りが同じ数」をまとめている、とも言える。そこでこの同値類を、剰余類ともいう。
因みに、こういうのを「類別」という。また、事実11、
事実11
ある集合Sで同値関係~が定義されているとすると、
(1)Sのどの要素も、ある同値類に属している。
(2)異なる同値類C,C'は共通要素をもたない:C≠C'ならばC∩C'=φ(空集合)
逆に言えば「もしC∩C'≠φならば、C=C'」ということである。
3の倍数と3で割って1余る数の集合と3で割って2余る数の集合を考えれば自明だろう。Sを整数全体の集合ℤとすると、任意の整数は必ずどこかのグループに入っているので(1)はOK。
また、例えば、3で割って1余る数の集合と3で割って2余る数の集合は共通要素を持たないし、逆に1つでも持てば全体が等しい事も自明だろう。よって、(2)もOK。
念のため、「逆に」と言ったが意味は「対偶」である。
おまけ:
https://www.asagei.com/excerpt/2754