解説
>αをFqのある拡大体におけるf(X)=0の根とする。そのとき、α^(q^n)=αであるから、α∈Fq^nである。
f(X)|X^(q^n)-Xより、X^(q^n)-X=f(X)・h(X)と置ける。(h(X)∈Fq[X])
∴α^(q^n)-α=f(α)・h(α)=0(f(α)=0より)
∴α^(q^n)=α
ここで、α^(q^n)-α=0とすると、定理6.6より、Fqの元はX^q-X=0の根だから、αはFq^nの元である。
∴α∈Fq^n
定理6.6
Kをq個(q=p^r,r≧1)の元からなる体とすると、Kは多項式X^q-Xの互いに異なるq個の根で構成されている。したがって、X^q-XはK[X]の中で1次式の積に分解される。
>それで、Fq(α)はFq^nの部分体と考えられる。
例6.3から分かる。
例6.3
定理6.1によれば有限体Lの乗法群L^*は巡回群であるから、L^*の生成元の1つをαとすればL^*=<α>である。したがって、Lの任意の部分体Kに対してL=K(α)となっている。すなわち、有限体Lはその任意の部分体Kの単純拡大である。
これは例えば、F8のある元をαとすると、F8=F2(α)となっているという事である。
そして、α∈Fq^nでFq^nはFqの拡大体(F8とF2の関係と同じ)なので、Fq^n=Fq(α)と表されるので、「Fq(α)はFq^nの部分体と考えられる」という事である。
>ここで、f(X)がαの最小多項式であるから[Fq(α):Fq]=m
定理6.4より。
定理6.4
K⊂L,α∈Lとしてαを体K上代数的な元とする。αのK上の最小多項式をp(X)の次数がnであるとする。このとき、{1,α,α^2,…,α^(n-1)}は体K(α)のK上のベクトル空間としての基底である。したがって、[K(α):K]=nである。
念のため、問題文から「f(X)∈Fq[X]を次数mの既約多項式とする」からmである。
>Fq(α)=Fq^m⊂Fq^nであるから、α∈Fq^nである。
Fq(α)⊂Fq^nから、Fq係数の多項式にαを代入したものはFq^nの元なので、αも元の1つである。∴α∈Fq^n
>したがって、α^(q^n)=αが成り立ち、αはX^(q^n)-X∈Fq[X]の根である。
(上から)α∈Fq^nで、定理6.6よりFqの元はX^q-X=0の根なので、αはX^(q^n)-X=0の根である。
∴α^(q^n)-α=0 ∴α^(q^n)=α
また、X^(q^n)-Xの係数は1と-1でFqは体なので乗法の単位元1とその加法の逆元-1を含むので、X^(q^n)-XはFq係数の多項式である。
∴X^(q^n)-X∈Fq[X] また、α^(q^n)-α=0より、
「αはX^(q^n)-X∈Fq[X]の根である」という事である。
念のため、何故こんな事をわざわざ言うのかは、補題2を適用するためである。
補題2
Kを体、αをKの拡大体Lの元であって、K[X]に属する既約多項式f(X)の根であるとする。このとき、K[X]の多項式g(X)がg(α)=0をみたせば、g(X)はf(X)で割り切れなければならない。
同じFq[X]の多項式である必要があるという事である。
おまけ: