問題
pを単項イデアル整域Rの元とする。このとき、次は同値であることを示せ。
(1)pはRの既約元である。
(2)(p)=pRはRの極大イデアルである。
(3)pはRの素元である。
別解
(1)⇔(3):Rは単項イデアル整域より演習問題11により、Rは一意分解整域である。
よって、問5.14より、既約元と素元は同値な概念である。
よって、示された。
演習問題11
Rが単項イデアル整域であれば、Rは一意分解整域であることを証明せよ。
問5.14
一意分解整域においては、既約元と素元は同値な概念であることを示せ。
次に(1)⇔(2):
まず、(1)⇒(2)だが、これは上の模範解答を使う。
(p)⊂I⊂Rと仮定する。Rは単項イデアル整域だから、I=(a)(a∈R)と表される。ゆえに、(p)⊂I=(a)よりp=ab(∃b∈R)と表される。pは既約だから、aまたはbはRの可逆元である。aがRの可逆元のとき、I=(a)=Rである(定理2.2)。bがRの可逆元のとき、pとaは同伴だから、(p)=(a)=I(問5.5) ゆえに、(p)は極大イデアルである。
念のため、解説。(p)⊂I⊂R⇒I=(a)=Rまたは(p)=(a)=Iが示されたからである。
極大イデアルの定義
Pを可換環Rのイデアルとする。Pを含んでいるRの真のイデアルが存在しないとき、すなわちIをRのイデアルとするとき
P⊂I⇒P=IまたはI=R
を満たすとき、Pを可換環Rの極大イデアルという。
定理2.2
環RのイデアルIが単位元1を含めばⅠ=Rとなる。
したがって、環RのイデアルIが可逆元を含めばI=Rとなる。
問5.5
Rを整域とし、aとbをRの元とするとき、次を示せ。
a~b⇔(a)=(b)
次に(2)⇒(1):p=ab(a,b∈R)と置く。ところで、仮定より、(p)=pRはRの極大イデアルなので、
P⊂I⊂R⇒(p)=IまたはI=Rである。また、Rは単項イデアル整域よりI=(a)(a∈R)と置ける。
(ⅰ)(p)=Iの場合、(p)=(a)より問5.5によってpとaは同伴である。よって、同伴の定義より、p=u・aと置くとuは可逆元である。よって、p=abのbは可逆元である。
(ⅱ)I=Rの場合、(a)=I=R ところで、Rは乗法単位元を含むので、∃r∈Rが存在して1=arが成り立つ。よって、aは可逆元である。
(ⅰ),(ⅱ)より、p=ab(a,b∈R)ならばaまたはbが可逆元であるので、pは既約元である。
既約元の定義
Rを整域とする。Rの可逆元でも0でもない元をaとする。a=bc(b,c∈R)ならば、bまたはcがRの可逆元でなければならないとき、aをRの既約元という。
因みに、(ⅱ)の場合、(a)=Rから定理2.2の逆によりaを可逆元と言う場合には、Rが単項イデアルだからと言わなければならない。
定理2.2
環RのイデアルIが単位元1を含めばⅠ=Rとなる。
したがって、環RのイデアルIが可逆元を含めばI=Rとなる。
一般的には逆は成り立たないだろう。I=aR+bR=Rとして、1∈Rに対して、1=ar1+br2となるr1,r2∈Rが存在しても、aもbもr1もr2も可逆元ではない。(片方が0になる時は単項イデアル環なのだろう。)
おまけ: