次の文章を完全解説して下さい。
定理1.18
(ℤ/2^nℤ)^*≃(ℤ/2^(n-2)ℤ)×(ℤ/2ℤ)(n≧2)
注:ℤ/nℤの剰余類のうちnと互いに素であるものだけを(ℤ/nℤ)^*と書き、既約剰余類と呼ぶ。
証明
補題(ⅰ)より5のmod2^nにおける位数は2^(n-2)ですから、
定理1.15(ⅰ)より、
1,5,5^2,…,5^(2^(n-2)-1)
はmod2^nで見てすべて異なり、全部で2^(n-2)個あります。
5^k≡1^k=1(mod4)であり、1~2^nには4で割って1余る数は2^(n-2)個ありますから、1,5,5^2,…,5^(2^(n-2)-1)をmod2^nで見ると4で割って1余る数がすべて出てきます。
同様に、
-1,-5,-5^2,…,-5^(2^(n-2)-1)
はmod2^nで見てすべて異なり、全部で2^(n-2)個あります。
-5^k≡-1^k=3(mod4)であり、1~2^nには4で割って3余る数は2^(n-2)個ありますから、-1,-5,-5^2,…,-5^(2^(n-2)-1)をmod2^nで見ると4で割って3余る数がすべて出てきます。
結局、
5^i(-1)^j(0≦i≦2^(n-2)-1,j=0,1)
で表される2^(n-2)×2=2^(n-1)個の数をmod2^nで見ると、(ℤ/2^nℤ)^*の元がちょうど1回ずつすべて出てきています。
同型写像を作っておきましょう。
(ℤ/2^nℤ)^*から(ℤ/2^(n-2)ℤ)×(ℤ/2ℤ)への写像φを以下のように決めましょう。|(5^i(-1)^j)の形で表された(ℤ/2^nℤ)^*の元からの移り先を次のように決めます。
φ:(ℤ/2^nℤ)^*→(ℤ/2^(n-2)ℤ)×(ℤ/2ℤ)
|(5^i(-1)^j)→(|i,|j)(0≦i≦2^(n-2)-1,j=0,1)
で定めます。すると、φは全単射であり、
φ(|(5^i(-1)^j)・|(5^k(-1)^l))=φ(|(5^(i+k)(-1)^(j+l)))=(|(i+k),|(j+l))
φ(|(5^i(-1)^j))+φ(|(5^k(-1)^l))=(|i,|j)+(|k,|l)=(|(i+k),|(j+l))
が成り立ちます。ここで、5の指数はmod2^(n-2)で、(-1)の指数はmod2で計算します。
結局、φ(|(5^i(-1)^j)・|(5^k(-1)^l))=φ(|(5^i(-1)^j))+φ(|(5^k(-1)^l))となり、φは同型写像です。(定理1.18の証明終わり)
補題
n≧2のとき、
(ⅰ)5のmod2^nでの位数は2^(n-2)である。
(ⅱ)5^2^(n-2)≡1+2^n(mod2^(n+1))
定理1.15
mをmodpにおけるaの位数とする。
(ⅰ)1(=a^0),a,a^2,…,a^(m-1)はmodpで見てすべて異なる。
(ⅱ)a^x≡1(modp)となるxはmの倍数である。
「ガロア理論の頂を踏む」石井俊全著より引用
解説
>5^k≡1^k=1(mod4)であり、1~2^nには4で割って1余る数は2^(n-2)個ありますから、
5≡1(mod4)であり、この両辺をk乗すると、5^k≡1^k=1(mod4)
また、1~2^nの間に4の倍数は2^n÷4=2^(n-2)個あるので、4で割って1余る数も2^(n-2)個ある。(同じ周期の個数という事。)
>結局、
5^i(-1)^j(0≦i≦2^(n-2)-1,j=0,1)
で表される2^(n-2)×2=2^(n-1)個の数をmod2^nで見ると、(ℤ/2^nℤ)^*の元がちょうど1回ずつすべて出てきています。
1,5,5^2,…,5^(2^(n-2)-1)をmod2^nで見ると4で割って1余る数がすべて出てきて、-1,-5,-5^2,…,-5^(2^(n-2)-1)をmod2^nで見ると4で割って3余る数がすべて出てくる。
ところで、4で割って1余る数は1,5,9,13,…
4で割って3余る数は3,7,11,15,…で2つを合わせると全ての奇数である。よって、(ℤ/2^nℤ)^*の元がちょうど1回ずつすべて出てくる。(既約剰余類の定義より2^nと互いに素なものだが、これは全ての奇数を意味している。)
>φ:(ℤ/2^nℤ)^*→(ℤ/2^(n-2)ℤ)×(ℤ/2ℤ)
|(5^i(-1)^j)→(|i,|j)(0≦i≦2^(n-2)-1,j=0,1)
で定めます。すると、φは全単射であり、
別の見方をすると、(ℤ/2^nℤ)^*の個数は2^nと互いに素なものの個数より2^nまでの全ての奇数より2^n÷2=2^(n-1)個。
また、(ℤ/2^(n-2)ℤ)×(ℤ/2ℤ)の個数は、2^(n-2)×2=2^(n-1)個なので、2つの集合の個数は等しい。よって、全単射の関係がある。
>結局、φ(|(5^i(-1)^j)・|(5^k(-1)^l))=φ(|(5^i(-1)^j))+φ(|(5^k(-1)^l))となり、φは同型写像です。(定理1.18の証明終わり)
よって、(ℤ/2^nℤ)^*≃(ℤ/2^(n-2)ℤ)×(ℤ/2ℤ)
次回はこれを解説して下さい。
>ここで、5の指数はmod2^(n-2)で、(-1)の指数はmod2で計算します。
おまけ: