次の文章を完全解説して下さい。
問題
pを素数とする。ℚの部分環ℤ(p)={m/n|m,n∈ℤ,(n,p)=1}のイデアルはすべてp^nℤ(p)という形をしていることを示せ。したがって、ℤ(p)は単項イデアル整域である。また、ℤ(p)は局所環であることを示せ。(局所環の定義は下に補足。)
証明
ℤ⊂ℤ(p)⊂ℚという関係になっている。ℤはℤ(p)の部分環である。ℤ(p)のイデアルⅠ'に対して、ℤの部分集合Ⅰ=Ⅰ'∩ℤを考える。
(1)このとき、もとのイデアルⅠ'はⅠによって生成されることを示す。すなわち、Ⅰ'=Ⅰℤ(p)を示す。Ⅰ⊂Ⅰ'であるから、Ⅰℤ(p)⊂Ⅰ'ℤ(p)=Ⅰ' ゆえに、Ⅰℤ(p)⊂Ⅰ'
逆に、α∈Ⅰ'⊂ℤ(p)とすると
α=m/n(m,n∈ℤ,(n,p)=1)
と表される。ここで、m=nα∈Ⅰ'∩ℤ=Ⅰ ゆえに、m∈Ⅰである。したがって、
α=m/n=m・(1/n)∈Ⅰℤ(p)
ゆえに、Ⅰ'⊂Ⅰℤ(p)である。
以上より、ℤ(p)の任意のイデアルⅠ'はℤのイデアルⅠによってⅠℤ(p)の形をしていることがわかった。
(2)ℤは単項イデアル環であるから(定理2.7)、ℤのイデアルⅠはⅠ=aℤ(a∈ℤ)という形である。したがって、ℤ(p)のイデアルはすべてaℤ(p)という形をしている。
(3)次に、ℤ(p)のイデアルaℤ(p)について、「aℤ(p)⊊⇔p|a」であることを示す。
aℤ(p)=ℤ(p)⇔1∈aℤ(p)
⇔∃m,n∈ℕ,1=am/n,(n,p)=1
⇔∃m,n∈ℕ,n=am,(n,p)=1
⇔∃m∈ℕ,(am,p)=1
⇔(a,p)=1
対偶をとれば、aℤ(p)⊊ℤ(p)⇔(a,p)>1⇔p|a ゆえに、a=p^rb(1≦r,∃b∈ℤ,p∤b)と表される。bはℤ(p)で可逆元であるから(§1演習問題4)、aℤ(p)=(p^rb)ℤ(p)=p^rℤ(p) したがって、ℤ(p)のイデアルはすべてp^nℤ(p)(n≧0)という形をしていることがわかった。
(4)α=m/n∈ℤ(p)とする。nはℤ(p)で可逆元であるから、このときαℤ(p)=(m/n)ℤ(p)=mℤ(p)である。
αが可逆元⇔αℤ(p)=ℤ(p)⇔mℤ(p)=ℤ(p)⇔(m,p)=1((3)の結果より)
ここで、pℤ(p)={m/n|p|m,(n,p)=1}に注意すると、U(ℤ(p))=ℤ(p)-pℤ(p)であることがわかる。
(5)pℤ(p)がℤ(p)の唯1つの極大イデアルである。すなわち、ℤ(p)の真のイデアルをⅠ'とし、pℤ(p)⊅Ⅰ'と仮定する。このとき、イデアルⅠ'には、イデアルpℤ(p)に属さない元αが存在する。すると、(4)によりこのときαはℤ(p)の可逆元となる。ゆえに、定理2.2よりⅠ'=ℤ(p)となり矛盾である。したがって、ℤ(p)の真のイデアルはすべてpℤ(p)に含まれる。以上より、pℤ(p)がℤ(p)の唯1つの極大イデアルである。
局所環の定義
Rを可換環とするとき、次の(1)と(2)は同値である。
(1)Rの極大イデアルは唯1つである。
(2)Rの可逆元でない元の全体はイデアルである。
このような環を局所環という。
定理2.7
有理整数環ℤのイデアルはすべて単項イデアルである。すなわち、有理整数環ℤは単項イデアル整域(PID)である。
§1演習問題4
pを素数とするとき、ℤ(p)={m/n|m,n∈ℤ,(n,p)=1}はℚの部分環であることを示せ。また、ℤ(p)の可逆元は何か。
後半の解答
a/b∈ℤ(p)のℚにおける逆元はb/aである。したがって、a/bがℤ(p)において可逆元であるための必要十分条件はb/a∈ℤ(p)なることである。すなわち、(a,p)=1である。よって、
U(ℤ(p))={a/b|a,b∈ℤ,(a,p)=1,(b,p)=1}
定理2.2
可換環RのイデアルⅠが単位元1を含めばⅠ=Rとなる。したがって、環RのイデアルⅠが可逆元を含めばⅠ=Rとなる。
全体的にもうちょっと分かり易く解説して下さい。因みに、
(5)pℤ(p)がℤ(p)の唯1つの極大イデアルである。すなわち、ℤ(p)の真のイデアルをⅠ'とし、pℤ(p)⊅Ⅰ'と仮定する。
ここは、pℤ(p)⊄Ⅰ'と誤植になっていました。ただでさえ難解なのに誤植は非常に困りますね。
おまけ: