解説
>したがって、1∈J1J2+Iであるから、定理2.2よりJ1J2+I=Rを得る。
J1J2がイデアルである理由ですね。
定理2.5の(3)の有限個の和の集合を1つに限定して考えると、J1J2はイデアルである。
定理2.5
I1,Ⅰ2を可換環Rのイデアルとすると、次の(1),(2),(3)それぞれにおける集合もRのイデアルである。
(1),(2)は省略。
(3)Ⅰ1Ⅰ2={a1b1+…+anbn|n∈ℕ,a1,…,an∈Ⅰ1,b1,…,bn∈Ⅰ2}
ただし、この証明の加法群である証明で、1個限定にすると不具合が生じて別証を必要とするような気がするのですが。(前回は別証を作ったが省略。)
そこで、今回の新作(別証)。
ⅠはRのイデアルだから、ⅠJ⊂ⅠR=Ⅰ よって、ⅠJはイデアルⅠの部分集合。
また、Ⅰ,Jはイデアルで加法群より零元を含むので、0=0・0∈ⅠJ
よって、集合ⅠJは加法の単位元を含む。
また、Ⅰはイデアルより元aの加法の逆元-aを含み、Jの元bとの積を考えると、-abが存在し、abの逆元が存在する。
よって、集合ⅠJは逆元を含む。
また、Rは環より加法群で加法の結合法則が成り立ち、Ⅰはその部分集合でⅠJはそのまた部分集合より結合法則が成り立つ。
よって、集合ⅠJは加法群である。
また、ⅠJはイデアルⅠの部分集合より、イデアルⅠの性質を持つ。(例えば、整数環ℤで考えると、4の倍数は2の倍数の部分集合で2の倍数であるというような事。)
以上より、ⅠJはRのイデアルである。
>x=x・1=x(a+b)=xa+xb∈ⅠJ
x,a,bは環Rの元より分配法則が使える。また、上の証明よりⅠJはイデアルより加法群なので、xa+xb∈ⅠJが成り立つ。
一応、前回の証明も挙げておきますね。
定理2.5
Ⅰ1,Ⅰ2を可換環Rのイデアルとすると、次の(1),(2),(3)それぞれにおける集合もRのイデアルである。
(1)Ⅰ1+Ⅰ2={x|x=a1+a2,a1∈Ⅰ1,a2∈Ⅰ2}
(2)Ⅰ1∩Ⅰ2
(3)Ⅰ1Ⅰ2={a1b1+…+anbn|n∈ℕ,a1,…,an∈Ⅰ1,b1,…,bn∈Ⅰ2}
すなわち、Ⅰ1Ⅰ2はⅠ1の元aiとⅠ2の元biの積aibiの有限個の和の全体の集合である。
(引用終わり)
Ⅰ1・Ⅰ2={ab|a∈Ⅰ1,b∈Ⅰ2}とした時、Ⅰ1・Ⅰ2はRのイデアルとなるでしょうか。
解法1
Ⅰ1Ⅰ2はⅠ1の元aiとⅠ2の元biの積aibiの有限個の和の全体の集合より、1個としても成り立つので、イデアルである。
解法2
Ⅰ1・Ⅰ2={ab|a∈Ⅰ1,b∈Ⅰ2}
x,y∈Ⅰ1・Ⅰ2とすると、x=a1b1,y=a2b2(ai∈Ⅰ1,bi∈Ⅰ2)と表されるので、
x-y=a1b1-a2b2
ここで、手詰まりとなりましたが、変な証明を作ってみました。吟味して下さい。
ところで、a1,a2,…,an∈Ⅰ1,b1,b2,…,bn∈Ⅰ2で、Ⅰ1,Ⅰ2はイデアルより、加法群なので、
a1+a2+…+an∈Ⅰ1,b1+b2+…+bn∈Ⅰ2
∴(a1+a2+…+an)(b1+b2+…+bn)∈Ⅰ1・Ⅰ2
∴a1b1+a1b2+…+anbn∈Ⅰ1・Ⅰ2
(Ⅰ1,Ⅰ2を可換環Rのイデアルなので分配法則が使える。)
ここで、aibj∈Ⅰ1・Ⅰ2より、集合Ⅰ1・Ⅰ2は加法について閉じている。
また、Ⅰ1,Ⅰ2はイデアルで加法群より零元を含むので、0=0・0∈Ⅰ1・Ⅰ2 ∴0∈Ⅰ1・Ⅰ2
よって、集合Ⅰ1・Ⅰ2は加法の単位元を含む。
また、Ⅰ1はイデアルよりaiの加法の逆元-aiを含み、Ⅰ2の元bjとの積を考えると、-aibjが存在し、aibjの逆元が存在する。
よって、集合Ⅰ1・Ⅰ2は逆元を含む。また、加法の結合法則が成り立つ事は自明とすると、集合Ⅰ1・Ⅰ2は加法群である。―――①
また、r∈R,c∈Ⅰ1・Ⅰ2とすると、c=abと表される。∴rc=r(ab)=(ra)b
a∈Ⅰ1でⅠ1はイデアルより、ra∈Ⅰ1
また、b∈Ⅰ2より、rc∈Ⅰ1・Ⅰ2
よって、r∈R,c∈Ⅰ1・Ⅰ2⇒rc∈Ⅰ1・Ⅰ2―――②
①,②より、Ⅰ1・Ⅰ2はイデアルである。
おまけ: